2019 Fiscal Year Research-status Report
ホウ素中性子捕捉療法と免疫療法併用のプロトコル確立を目指した基礎研究
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18K07750
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
木梨 友子 京都大学, 複合原子力科学研究所, 准教授 (80252534)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ホウ素中性子捕捉療法 / アブスコパル効果 / 放射線感受性 |
Outline of Annual Research Achievements |
がんの放射線治療時の局所照射により特異的な腫瘍免疫応答が惹起されて起きるアブスコパル効果をとらえ、BNCTプラス免疫療法のプロトコルを提案することを目標として研究を進めた。今年度はマウスの放射線感受性でアプスコパル効果が変化するかを解析するために、放射線校感受性のマウスの頭部照射時の脾細胞の免疫反応を観察した。放射線高感受性マウスとしてはDNA二重鎖切断(DNA-DSB)の修復障害により放射線高感受性であるC.B-17 SCIDマウスを用い、近交系C3Hマウスの反応と比較した。マウス頭部のガンマ線照射時の非照射部位のアブスコパル効果をとらえるため、照射後24時間後にマウス脾臓からT細胞を分離培養し、アポトーシス誘導と微小核形成について解析を行った。頭部照射後の脾リンパ球のアポトーシス誘導は、脾臓線量と同等のガンマ線照射時の脾リンパ球に誘導されたアポトーシスよりも大きいことが確認された。頭部照射後の脾リンパ球の微小核数は、脾臓線量と同等のガンマ線照射時の脾リンパ球の微小核数より約2倍の増加を認めた。これらの結果から、頭部のガンマ線照射時の非照射部位のアブスコパル効果をとらえることができた。マウスの放射線感受性でアプスコパル効果が変化するかを解析した結果、放射性感受性の差はとらえられなかった。免疫器官である脾細胞の応答でもあるアプスコパル効果は放射線感受性の個体差の影響を受けにくいと考えられた。これらの結果から、ホウ素中性子捕捉療法で用いられる中性子照射では、照射後の粘膜や皮膚の急性障害においては、患者の放射線感受性の個人差はエックス線やガンマ線照射時に比してあらわれにくいことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中性子照射後に経時的に脾臓を取り出し脾細胞のアポトーシスの変化を経時的に調べた結果、脾細胞のアポトーシスの変化は頭部の線量に伴って増加することが分かった。同時に経時的に血中のリンパ球数および免疫反応マーカーを調べたが、リンパ球数は脾細胞のアポトーシス変化に類似して変化したが有意な免疫反応の変化はとらえられなかった。放射線治療分野でのアブスコパル効果は照射部位の血管損傷が原因の一つであるとされている。中性子照射実験では照射部位への線量不足で血管損傷まで至っていないことが考えられる。放射線感受性の異なるマウスを用いた実験ではアブスコパル効果の出現の違いについて成果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
現在の実験系では、中性子照射時のアブスコパル効果による免疫系の賦活化を十分にとらえられていない。この問題を解決するために、ホウ素濃度を上げて照射時間を長くする方法がある。さらに、最近の研究報告から、がんの治療で使用される抗ガン剤のアルキル化剤が腫瘍免疫を賦活化するとの報告がある。そこで、あらかじめアルキル化剤等をマウスに投与してBNCT中性子照射を行い、中性子照射後の免疫反応賦活化させた状態でアブスコパル効果を観察することを計画している。
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Causes of Carryover |
2019年9月1日施行の放射性同位元素等の規制に関する法律(旧名称:放射線障害防止法)の施行に伴う特定放射線防護措置により、ガンマ線照射施設が対象となったため、対応とメンテナンス工事のためガンマ線照射施設の利用が休止され、予定していたマウスのガンマ線照射実験ができなかった。ガンマ線照射は2020年度は再開されるため、マウスのガンマ線照射実験を2020年度に実施する予定である。
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Research Products
(2 results)