2020 Fiscal Year Research-status Report
ホウ素中性子捕捉療法と免疫療法併用のプロトコル確立を目指した基礎研究
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18K07750
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
木梨 友子 京都大学, 複合原子力科学研究所, 准教授 (80252534)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 中性子 / アブスコパル効果 / 放射線感受性 |
Outline of Annual Research Achievements |
がんの放射線治療時の局所照射により特異的な免疫応答が惹起されて起きるアブスコパル効果をとらえ、BNCTプラス免疫療法のプロトコルを提案することを目標として研究を進めている。今年度はマウスの頭部部分中性子照射時の脾細胞の免疫反応の特徴を捉えることを目的に実験を行った。 放射線高感受性マウスとしてはDNA二重鎖切断の修復障害により放射線高感受性であるC.B-17 SCIDマウスを用い、近交系Balb/cおよびC3Hマウスの反応と比較した。マウスの部分照射時の非照射部位の免疫応答をとらえるため、中性子照射後7~14日目に脾臓を取り出し脾細胞の各種免疫応答を測定し、脾細胞の免疫応答の変化をとらえた。中性子照射後の免疫応答はすべての種類のマウスで比較対象のガンマ線の頭部部分照射時の脾細胞の免疫応答に変化に比べて、いずれも免疫応答が低い値であった。一方、中性子部分照射をうけたSCIDマウスは照射後100日目から死亡しはじめ、180日で生存率が40%と低下して365日目には生存は0%となった。中性子の頭部線量は1Gy前後であり、SCID マウスが骨髄死に至る平均線量が4Gy前後であるので、この4分の1の線量で個体死が起こっていることとなる。近交系マウスの生存率は照射後180日目は100%で、270日でBalb/cが80%、C3Hは100%、365日目でBalb/cが75%、C3Hは80%である。このことより、特に放射線感受性の高いマウスへの中性子部分照射は個体の免疫機能を低下させているのではないかと思われた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウスの頭部への中性子部分照射後に経時的に脾臓を取り出し脾細胞のアポトーシスの変化を調べた結果、脾細胞のアポトーシスの変化は頭部の線量に伴って増加することが分かった。アポトーシス変化は照射後24時間後にピークとなり、7日後にはほぼ回復していた。このことから、中性子照射後7~14日目に脾臓を取り出し脾細胞の各種免疫応答を測定し、脾細胞の免疫応答の変化をとらえた。中性子照射後の免疫応答は、比較対象のガンマ線の頭部部分照射時の脾細胞の免疫応答に変化に比べて、いずれも免疫応答が低い値であった。現在までの中性子照射では照射部位の中性子線量の寄与は血中のホウ素濃度に依存して大きくなる。中性子部分照射時による脾細胞へのアブスコパル効果の特徴を捉えるためにはホウ素濃度を上げて中性子線量の寄与を大きくして実験を行うことが必要であることが分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
現在の研究からは中性子部分照射時のアブスコパル効果による免疫賦活の結果は得られていない。ただし、現在の照射部位の中性子線量の寄与は血中のホウ素濃度に依存し中性子部分照射時による脾細胞へのアブスコパル効果の特徴を捉えるためにはホウ素濃度を上げて中性子線量の寄与を大きくして実験を行うことが必要である。さらに、最近の研究報告から、がんの治療で使用される抗ガン剤のアルキル化剤が腫瘍免疫を賦活化するとの報告がある。そこで、あらかじめアルキル化剤等をマウスに投与して中性子照射を行い、中性子照射後の免疫反応賦活化させた状態でアブスコパル効果を観察することを計画している。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症対策のための移動制限により出張がなくなり旅費を使用しなかった。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] BNCT for primary synovial sarcoma2021
Author(s)
Fujimoto T, Suzuki M, Kuratsu S, Morishima M, Sudo T, Nakamatsu Y, Sakurai Y, Takata T, Tamari Y, Tanaka H, Masunaga SI, Kinashi Y, Kondo N, Sakakibara S, Igaki H, Andoh T, Sakamoto S, Kawamoto T, Watanabe T, Hara H, Fukase N, Kawakami Y, Matsumoto T, Akisue T, Ono K, Ichikawa H, Kuroda R, Hirose T.
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Journal Title
Applied Radiation and Isotopes
Volume: 169
Pages: 109407
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Characteristic evaluation of the thermal neutron irradiation field using a 30 MeV cyclotron accelerator for basic research on neutron capture therapy2020
Author(s)
Tanaka H, Takata T, Watanabe T, Suzuki M, Mitsumoto T, Kawabata S, Masunaga S, Kinashi Y, Sakurai Y, Maruhashi A, Ono K.
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Journal Title
Nuclear Inst. And Methods in Physics Research, A
Volume: 983
Pages: 164533
DOI
Peer Reviewed