2018 Fiscal Year Research-status Report
遅発性活性酸素を抑制するがん細胞特異的因子は放射線治療の標的となりうるか
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18K07764
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
菓子野 元郎 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (00437287)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 活性酸素 / ミトコンドリア / エクソソーム / 放射線感受性 |
Outline of Annual Research Achievements |
放射線感受性に影響を及ぼす「細胞外因子」の解明を目指して研究を進めた。ラットグリオーマ細胞のC6細胞、及びラットアストロサイト細胞由来RNB細胞において、培養4日後の培養上清を回収後、別に用意した同種細胞へ24時間処理し、細胞内酸化度をAPFアッセイにより調べた。その結果、培養上清処理により、両細胞ともに酸化度が下がることがわかった。培養4日後の培養上清中のグルタミン濃度は低下しており、それに伴いグルタチオン量も低下していることをすでに確認している。従って、培養上清中の何らかの成分がグルタミン低下またはグルタチオン低下による酸化度の増加を検知し、酸化度を下げる働きをしていることが示唆される。細胞外因子としてサイトカイン、及びエクソソームが重要な働きをしていると考えているが、この結果は、サイトカインまたはエクソソームが細胞内酸化度の恒常性を維持する働きをしている可能性を示唆している。 細胞内酸化度に関わるミトコンドリア代謝の寄与を調べた。方法は細胞外フラックスアナライザー「シーホース」によるミトストレステストを使用した。その結果、C6細胞において、グルタミン欠損条件下ではミトコンドリア代謝は低下していたのに対し、培養上清処理細胞ではミトコンドリア代謝は亢進していることがわかった。この結果より、培養上清中のグルタミン以外の成分、おそらくサイトカインまたはエクソソームがミトコンドリア代謝へ影響し、ミトコンドリア機能を亢進している可能性が考えられる。 C6細胞において、培養上清を処理した細胞の放射線感受性は高まっており、このことはグルタミン欠損時の結果と同様である。このことから、培養上清成分が及ぼす細胞内酸化度への影響は、放射線感受性の変化には結びつかないと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験計画で記載した平成30年度に実施する計画の実験をほぼ行うことができた。細胞株の数としてはまだ十分ではないので、次年度以降も複数の正常細胞と癌細胞株で遅発性活性酸素制御に関わる実験を実施していきたい。また、申請書で仮説として提案したとおり、細胞外因子が細胞の酸化度を抑制し、放射線抵抗性獲得の原因になっていることを明らかにしつつある。エクソソーム単独による影響をさらに解明していくための土台が整った段階と言える。この点も計画が順調である理由である。サイトカインの影響については、2019年度以降に実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今のところ、ほぼ計画通りに進行しているため、大きな計画の変更は必要ないと考えている。2018年度に実施したエクソソームによる酸化度、及び放射線感受性への影響については、C6では大きな変化がみられなかった。まだ他の細胞株で実施していなので、他の癌細胞及び正常細胞でどのようになるかを早急に調べ、同時にサイトカインの影響をIL-6やIL-8の中和抗体処理実験により調べることにより、2019年度に酸化度に影響する細胞外因子をある程度絞り込みたいと考えている。次に予定しているアスコルビン酸誘導体による効果を見る実験がスムーズに運ぶよう、当初の仮説を実証できる適切な細胞株と実験条件を見い出したいと思う。この計画で行けば、期間中に放射線抵抗性の原因になっている細胞外因子を見つけ、アスコルビン酸誘導体で改善する治療方策の提案まで進めると思われる。
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Causes of Carryover |
当初予定していた2018年度の実験回数が少なくなったため、使用する実験試薬類の購入が少なくなったため当該助成金が生じた。研究計画では2018年度から2019年度の2年間かけて実施することになっているので、2018年度に少なくなった回数分の実験を2019年度に実施する予定である。そのための実験試薬類の購入に次年度使用額分を使用する。
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