2019 Fiscal Year Research-status Report
遅発性活性酸素を抑制するがん細胞特異的因子は放射線治療の標的となりうるか
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18K07764
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
菓子野 元郎 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (00437287)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | VEGF / 酸化ストレス / 放射線抵抗性 |
Outline of Annual Research Achievements |
ラットグリオーマ細胞の培養上清による影響を調べたところ、3日間培養後の上清には放射線抵抗性を誘導する因子が含まれることが分かった。このとき、酸化ストレスの軽減作用が見られたため、抗酸化因子の誘導を介した抵抗性獲得が示唆された。以前に実施したBioplexサイトカインアレイの結果より、VEGF(血管新生増殖因子)が3日後の培養上清で劇的に増えていたので、この関与を調べた。その結果、VEGFを処理した細胞は酸化ストレスが軽減し、放射線感受性が低くなることが分かった。VEGF処理細胞では、照射直後の53BP1フォーカス形成頻度が少なくなっていたので、これまでの結果と合わせて考えると、VEGFが作用した細胞では抗酸化能が高まり、照射による活性酸素の誘導、それによるDNA二本鎖切断の誘発が抑制されたと考えられる。 VEGFの阻害剤Axitinibの処理により、放射線増感効果が見られるか否かについて、C6細胞で調べたが、1~50uMの範囲で放射線増感効果は見られなかった。処理のタイミングと他のシグナル伝達経路の阻害による影響があると考えられる。siRNAにより特異的にVEGF発現を抑制したが、この条件でも有意な放射線感受性の増加は見られなかった。 以上の結果より、3日後の培養上清に含まれるVEGFが放射線抵抗性を誘導している可能性は高いが、他の因子による複合的な作用も関連するのかもしれない。3日後の培養上清では、グルタミン酸やグルコースなどの栄養因子が枯渇していく時期でもあるため、それらとの関連性について今後調べていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、複数の細胞株と動物モデルによる実験を計画していたが、ラットC6細胞による実験に集中している。理由は、C6細胞の培養上清成分中に放射線抵抗性を誘発する因子としてVEGFが役割を果たすことが分かったからである。このことは新規性のある結果であり、計画を変更してこの機構解明にシフトしている。これまでの成果と残り1年の実施期間を考えると、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
VEGFによる放射線抵抗性獲得の機構解明は新規性のある研究なので、当初の予定に加えて実施していきたい。具体的な実験手法は、当初の計画で使用予定であった消耗品や機器類を使用するので問題なく実施できる。現在のコロナウィルス対応の社会的背景を考えると、国内学会参加に必要な旅費などの使用が減る可能性がある。その分の費用は、新規課題の解明に用いる消耗品費に充てる予定である。2020年度は最終年度であるので、実験の総括を見据え、実験終了時期を慎重に考慮したい。
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Causes of Carryover |
消耗品の使用量が予定よりも少なくなったため、2019年度分の残額が生じた。実験に使用した細胞株の種類が予定より少なかったためである。2020年度は当初予定した実験に加え、新たに解明すべき課題(VEGFによる放射線抵抗性獲得機構)が加わったので、その実験の消耗品使用に充てる予定である。
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