2018 Fiscal Year Research-status Report
クロロキンのドラッグリポジショニングによる新規放射線増感治療の開発
Project/Area Number |
18K07771
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
茂松 直之 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (30178868)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
深田 淳一 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (50338159)
公田 龍一 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (00464834)
小池 直義 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (60464913)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 膵臓癌 / 放射線照射 / 増感剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は膵臓癌に対するクロロキンの放射線増感効果を探索すること目標とした。まずヒト膵臓癌培養細胞の中からMiaPaCa2を選択し、通常培地(DMEN)中で培養し、3次元スフェロイドを形成させる。これにより中心部が低栄養の状態を作ることができ、膵癌組織に近い状態を再現するとともにオートファジーの関与についても検討することが可能である。低接着ディッシュ上で培養することでスフェロイドが形成されたが、その大きさにはバラつきが生じた。スフェロイドによる個体差を避けるため、低接着ウェルにて単一スフェロイドの形成を行った。低接着型96ウェルに1ウェルあたり1000個の細胞を播種することで均一なサイズのスフェロイド形成を得ることができた。これらに放射線照射、放射線照射とクロロキン投与併用の処理を行いスフェロイドのサイズを測定した。放射線照射は4Gy、クロロキン濃度は0.1-10μMで投与した。オートファジーは試薬(DALGreen)を添加して蛍光を観察した。処理後1週間までサイズを測定したが、スフェロイドのサイズの変化は軽微であった。また、放射線照射、放射線照射とクロロキン投与処理をすることで蛍光を観察することができたが、クロロキン投与による蛍光の差などは明らかにできなかった。本年度は膵癌培養細胞において、スフェロイド形成を得ることが可能であり、また放射線照射、放射線照射とクロロキン投与処理によりオートファジー現象を示唆する蛍光を定性的に観察することが可能であった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
3次元スフェロイドを形成するヒト膵臓癌培養細胞を選択することが必要であり、MiaPaCa2を低接着ディッシュ上で培養することでスフェロイド形成が可能であった。これにより中心部が低栄養の状態を作ることができ、培養細胞で膵癌組織に近い状態を簡便に再現した。ディッシュ上で複数のスフェロイド形成が可能であったが、サイズに大小があり、コントロール、照射、照射と薬剤の投与による細胞の反応を比較するためには単一のスフェロイド同士の方が平易に比較できると考え、低接着の96ウェル上にて培養(1000個/ウェル)することでほぼ均一なサイズの単一のスフェロイドを形成することが可能であった。 クロロキン投与による放射線増感効果を検討するため放射線照射、放射線照射とクロロキン投与併用の処理を行った。今回の検討ではスフェロイドのサイズに有意な差を見出すことができなかった。クロロキン投与によるオートファジーは試薬を添加して蛍光を観察することができたものの放射線照射、放射線照射とクロロキン投与処理による差などは明らかにできなかった。 上記のような結果を得たが、本年度の進捗状況としては通常培地における培養とスフェロイド形成を主体とした定性的な検討にとどまっており、やや遅れている。スフェロイド形成が可能なディッシュ、ウェルの選択や照射線量、クロロキンの投与量選択に時間を要したためである。しかしながら基本的な設定については本年度確定しており、次年度以降は本年度の設定を使用することが可能である。
|
Strategy for Future Research Activity |
1)低栄養培地におけるクロロキン投与と細胞応答 次年度はまず、オートファジーが発現すると思われる低栄養培地で細胞を培養し、細胞応答について検討を行う。具体的には細胞生存率、DNA損傷、オートファジー発現、アポトーシス誘導、細胞周期の変化について検討する。本年度確立した3次元スフェロイドの状態で放射線照射、クロロキン投与、照射と薬剤併用の3群で処理を行い、変化を比較する。生存率については96ウェル上で行い吸光度をプレートリーダーで測定する。DNA損傷については35mmディッシュで観察を行う。その他については6ないし10cmディッシュ上で細胞を固定・回収し、フローサイトメトリーで抗体を用いて定量的に測定する。 2)クロロキン投与とmTOR阻害剤投与の比較 前項と同様の処理を行い、mTOR系活性を解析することでクロロキンの作用部位、作用機序を明らかにする。これまで当研究室で解析してきたmTOR阻害剤(エベロリムス)はクロロキンと異なりオートファジーを活性化する。mTOR阻害剤は抗腫瘍効果を有しており放射線との併用効果も観察されている。この点について、クロロキンと抗腫瘍効果、作用を比較検討することで放射線増感効果が高い薬剤を特定する。 3)実験動物を用いた腫瘍組織・正常組織レベルでの放射線増感効果・有害反応評価 膵癌細胞をヌードマウス大腿皮下に移植し腫瘍を形成させる。放射線照射、クロロキン投与、照射とクロロキン投与を行い、腫瘍増殖率を測定する。さらに固定凍結切片を作成し、in vivo におけるオートファジー活性及びmTOR活性を評価する。クロロキンの腫瘍血管への影響や転移形成抑制効果についても、免疫染色や動物用CT撮像を用いて評価し、臨床応用に結びつけ、治療成績向上につながりうる研究となるように実験を行う。
|
Causes of Carryover |
若干の次年度使用額が生じたが、効率的な消耗品購入を行ったためである。
|
Research Products
(3 results)