2019 Fiscal Year Research-status Report
| Project/Area Number |
18K07773
|
|---|
| Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
|---|
Principal Investigator |
寅松 千枝 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (90421825)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
| Keywords | PET / washout |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
粒子線治療の線量分布検証法として陽電子放出断層撮影（PET）が用いられてきた。これは照射した粒子線と患者体内での原子核破砕反応から発生した陽電子放出核（主に11C、15O）をPETで可視化する原理である。しかし、発生した陽電子放出核は生理学的現象により拡散するため、精密な検証を行うにはこの洗い出し効果をモデル化し補正しなくてはならない。また、洗い出し効果は照射に対する反応を示す可能性があるという臨床報告もあり、その機序の解明が求められる。本研究では洗い出し効果のモデル化を目指し、照射ビームにより発生した陽電子放出核の薬物動態解析を行った。
まず、11C、15Oビームをウサギの脳に照射し、検出素子内における深さ方向の相互作用位置(DOI)の弁別が可能な高精度PET開発機を用いてin-beam PET撮像を行った。得られたデータから、２-コンパートメントモデルを仮定することで入射ビームの洗い出し速度を算出した。
11Cの組織から血液（または血漿中）に流出する速度から、入射11Cは11CO2や11COの化学系となり、何らかのトランスポータにより輸送される成分があることが示唆された。一方15Oを含む分子の動態は、単純拡散するトレーサと同等であった。入射15Oは水（H215O）の化学形となって拡散する成分があると考えられる。
PET診断で一般的に用いられる解析手法を用いることで、治療ビームにより発生した陽電子放出核と一般的な放射性診断薬剤の動態を比較検証することができた。今回の実験により生理学的洗い出し効果をモデル化する上で重要な基礎データが得られた。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は二回の照射実験を行い、順調にデータを収集することができた。また、解析結果をまとめた論文が受理され、国際・国内学会にて公表した。
|
| Strategy for Future Research Activity |
これまで、正常な小動物に陽電子放出核ビームを照射し、体内での入射イオンの生物学的洗い出し速度と分布を測定し、基礎データを収集した。これらのデータは、陽電子放出断層撮影（PET）を用いた粒子線治療のin-vivoによる線量分布検証法に用いることができる。ここで、生物学的洗い出し効果は照射に対する反応を示しているという臨床報告があり、この効果を定量評価することで診断の指標として用いることができる可能性がある。今後は担癌モデルを用い、同様の照射実験を行う。そして臨床応用へ向けた考察を開始する。
|
| Causes of Carryover |
当該年度に行う予定であった再現実験がキャンセルとなり、当該助成金が生じた。翌年度分として請求した助成金は、8月に予定している照射実験で使用する予定である。
|
