2021 Fiscal Year Annual Research Report
Repair mechanism for DNA double strand breaks caused by heavy-ion irradiation in quiescent mammalian cells
Project/Area Number |
18K07775
|
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
泉 雅子 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 専任研究員 (00280719)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | DNA修復 / 重粒子線 |
Outline of Annual Research Achievements |
静止期に同調したヒト正常繊維芽細胞を、代替的非相同末端結合に必要なPARP-1、一本鎖アニーリングに必要なRad52の阻害剤でそれぞれ処理し、重粒子線照射後のDNA二本鎖切断修復のタイムコースを、蛍光抗体で検出されるリン酸化型ヒストンH2AXのフォーカス数を指標に調べた。 DNA-PKの阻害剤が修復を阻害するのに対して、これらの阻害剤は修復のタイムコースにほとんど影響を与えず、主要な修復経路は非相同末端結合であることが判明した。一方、G1期に同調したHeLa細胞に重粒子線を照射し、クロマチンを精製して損傷依存的に結合するタンパク質をウエスタンブロットにより解析したところ、一本鎖アニーリングに関与するRad52のクロマチン結合量が線量に依存して増加していた。静止期、G1期は共に姉妹染色体が存在しないが、その修復様式には差異があることが示唆された。 また、静止期の正常繊維芽細胞における重粒子線照射のリスク評価を行うため、照射後に修復の時間を与えた後に増殖期に導入して生存率を調べたところ、増殖期に導入される正常繊維芽細胞ではリン酸化型ヒストンH2AXのフォーカスが観察されず修復が完了しており、生存率も非照射の細胞と有意な差が見られなかった。一方、HeLa細胞では重粒子線照射後、リン酸化型ヒストンH2AXのフォーカスが5~7個程度存在した状態で分裂期に入り、微小核の増加や生存率の低下を引き起こした。したがって、チェックポイントコントロールが機能している正常な細胞においては、損傷が残っている状態では細胞は分裂を停止してがん化のリスクは比較的低いと考えられる。しかし、がん幹細胞のようにチェックポイントコントロールや染色体の不安定性を引き起こすような変化が起きている細胞においては、重粒子線により染色体の不安定性を引き起こす可能性があると考えられる。
|