2018 Fiscal Year Research-status Report
C型インフルエンザの隔年流行の宿主側要因と同ウイルス感染小児の重症化要因の解明
Project/Area Number |
18K07783
|
Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
松嵜 葉子 山形大学, 医学部, 准教授 (00292417)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | インフルエンザ / 呼吸器感染症 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度の研究で次のような実績を得た。 1.C型インフルエンザウイルスの表面蛋白であるHE蛋白の中和エピトープを、HE蛋白の立体構造上に初めて位置づけることができた。これは、これまでに継続して実施してきた約240株の抗HE 単クローン抗体に対するエスケープ変異株の解析によって得られた成果である。 2.偶数年のC型インフルエンザの流行を裏付ける結果を、山形県でのサーベイランスで得ることができた。2018年の1月から6月に40株のC型インフルエンザウイルスが分離された。抗原解析を実施した結果、すべてサンパウロ系統株で、この系統株の流行が継続していることが明らかになった。しかし、新しい単クローン抗体(YA3)を解析に加えたところ、新たな知見を得ることができた。サンパウロ系統株の中に2つのサブグループがあり、それはYA3の反応性によって分けることができるというものである。YA3の反応性の違いは、HE蛋白の一箇所のアミノ酸がリシン(K)からアスパラギン(N)に変わることによって生じることが明らかになった。この部位は、平成30年度の研究で確立した抗原構造の立体モデルによって中和エピトープの中にあることが判明したため、この変異によって流行が拡大する可能性が示唆された。 3.隔年流行と抗体保有率の関連を明らかにする目的で、山形県住民のC型インフルエンザウイルスに対する抗体保有調査を実施した。平成29年度(2017年)の結果と比較すると、0-4歳でサンパウロ系統株に対する抗体保有率の上昇が見られた。これは、2018年にサンパウロ系統株によるC型インフルエンザの流行が0-4歳の年齢層でみられたことを裏付けるものと考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた研究実施計画について、実績概要に記したような成果を出すことができた。 流行拡大と重症化の要因としての抗原変異を、立体構造モデルから解析ができるようになった意義は大きい。
|
Strategy for Future Research Activity |
2019年になって、海外からC型インフルエンザのnational surveillanceの報告が相次いであった。韓国、ドイツ、カメルーンなど、大陸の異なる地域からであり、今後の研究方針を考える上で参考になっている。 まず、平成30年度の研究で注目したHE蛋白のアミノ酸変異が、海外の流行株にもあるかを調べる。もしあれば、このアミノ酸の重要性と、C型ウイルスの広がりがglobalであることを証明できる。その他の変異についても、我々が確立した抗原構造の立体モデルを基にして、HE蛋白上のどの位置にあるかを明らかにし、ウイルスにとって優位な変異を推測する。現在、いくつか候補となるアミノ酸があるので、そのアミノ酸変異をもつウイルスの解析を進める予定である。 次に、宿主側の解析として、海外からの報告では0-4歳の感染が多いこと、入院小児を対象にした検出率は低いこと、他のウイルスとの重複感染例が比較的多いことが挙げられた。これは、我々のこれまでの解析とも合致するため、今後は、重症化要因として「重複感染」と「2歳未満の低年齢」の2つに絞り、C型インフルエンザ感染者の解析をする予定である。 平成30年度の抗体保有調査で、40歳代での神奈川系統株に対する抗体保有率の上昇がみられた。成人はサーベイランスの対象外のため、流行を捉えることはできないが、来季以降に小児の間で神奈川系統株の流行が発生する可能性が示唆された。予測通りであれば、成人での再感染が小児におけるC型インフルエンザの流行を左右する結果を得ることになる。免疫による選択圧が隔年流行に影響していることを実証することにもなるため、引き続き、抗体保有調査を実施する。
|
Causes of Carryover |
予定よりも物品の購入を抑えたため、繰越額が生じた。繰り越した額は、平成31年度実施予定の研究の試薬消耗品費として使用する予定である。
|