2019 Fiscal Year Research-status Report
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18K07788
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
森 雅樹 滋賀医科大学, 神経難病研究センター, 特任准教授 (10602625)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 若年特性 / 若年性遺伝子 / 若年性リンクRNA / 細胞若年性 / 年齢依存的オルタナティブ・スプライシング / 若年性トランスクリプトーム / 細胞代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
小児期の神経難病の病態理解と治療法開発を目指し、小児発達期の大脳皮質および心筋細胞・肝細胞で高発現している遺伝子群を若年性遺伝子 (juvenility-associated genes, JAGs) として同定した。さらに、トランスクリプトーム解析の対象を非コードRNAに拡張し、若年期臓器で高発現しているロング・ノンコーディングRNA (lncRNA)として、若年性リンクRNAを同定した (juvenility-associated lncRNA, JALNC)。加えて、発達期においては、成人後には認められない特有のパターンのオルタナティブ・スプライシングが起きることをゲノムワイドに明らかにし、年齢依存的オルタナティブ・スプライシング (age-dependent alternative splicing, ADAS)として同定した。ADASにより、ミトコンドリア機能のほか、タンパク質合成が制御を受け、細胞の代謝ダイナミクスが変化することを明らかにし、国際学術誌にて発表した。 ADASの直接的な標的は、EIF4A2やRBM7であり、若年期にはこれらの酵素の同化型バリアントが発現する。小児期は高い同化活性によって特徴づけられる。両酵素のような同化に関わる酵素分子の発現が、成人後には認められなくなる若年期の成長活性の分子実体である可能性がある。 小児難病治療を目的とする観点から、小児が本来もっている成長のポテンシャルをさらに引き出すことがを考えている。EIF4A2やRBM7の同化型バリアントの発現を誘導するような治療戦略が考えられ、今後の研究を推進するための重要な知見が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
次世代シーケンサーを用いた包括的トランスクリプトーム解析およびバイオインフォマティクス解析により、臓器発達期において、オルタナティブ・スプライシングのパターンがゲノムワイドに変化することを明らかにすることができた。発達期のスプライシングの変化についての研究は前例が少なく、バイオインフォマティクス解析を駆使して網羅的にスプライシング・イベントを定量的に解析できた意義は大きいと考えられる。同知見は国際学術誌にて発表を行った。 また、このオルタナティブ・スプライシング解析により、難病治療における有力な遺伝子標的を同定することができた。この知見により、今後、より標的を絞り込み、治療を見据えた研究の推進が可能になるため、計画以上の進展と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
同定された年齢依存的オルタナティブ・スプライシング (ADAS) の標的遺伝子について、小児神経難病の治療戦略の確立につなげる治療を推進する。標的遺伝子として同定されたEIF4A2やRBM7は、それぞれmicroRNAによるタンパク質への翻訳抑制や、リボソーム生成に関わるsnoRNAの分解を担う酵素である。両者は代謝において異化 (catabolism) にはたらく分子であるが、発達期の成長や成熟における役割はよくわかっていない。今後の研究は、両酵素を含めた治療標的候補分子についての分子細胞解析および動物を活用した疾患モデル解析により、病態の治療研究を推進する。 小児期の神経難病モデルについて、分子細胞生物学解析のほか、病理解析および行動解析のプラットフォームも配備を進めており、これらの解析系を用いて、動物個体における神経機能の解析も施行する。
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