2018 Fiscal Year Research-status Report
横紋筋肉腫における血管新生制御因子Vasohibin2の機能解析と新規治療法開発
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18K07812
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鈴木 康弘 東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (60332277)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | Vasohibin / 横紋筋肉腫 / リン脂質結合性 / 血管新生 / がん微小環境 / がん悪性化 / チューブリン / 脱チロシン化 |
Outline of Annual Research Achievements |
VASH2の高発現する胞巣型横紋筋肉腫細胞RH30(親株)とそのVASH2欠損細胞株(VASH2KO)を用いて、in vitro及びin vivoの実験系で互いの性質の違いを比較検討した。VASH2KO は親株と比して、チューブリン脱チロシン化レベルが顕著に低下しており、細胞外マトリクスへの接着性が低下していた。同様の結果は、脱チロシン化阻害剤であるParthenolideを親株に処理した場合でも確認された。通常の二次元培養における細胞増殖能には両者に明確な差が認められなかったが、VASH2KOでは三次元培養におけるスフェロイド(細胞凝集塊)形成能が減弱する傾向が確認された。in vivoの評価のためヌードマウスへの皮下移植実験を行ったところ、VASH2KO は親株と比して腫瘍の発育が有意に抑制され、腫瘍組織切片の比較においても、VASH2欠損によって細胞増殖マーカーKi-67の発現が減少していた。親株の移植によって形成された腫瘍組織では、低酸素領域とネクロ―シス領域が広範囲に確認されたが、VASH2KOの腫瘍組織では両方とも低減されていた。精製蛋白を用いた実験においては、VASHはSVBPと複合体を形成することによって、リン脂質結合性に変化が生じることを確認した。また、VASH2-SVBP複合体蛋白とRH30細胞の抽出液を用いて、アフィニティー精製により結合蛋白を探索したところ、チューブリンをはじめとする細胞骨格関連因子・核内因子・キナーゼ等を同定した。以上の結果は、横紋筋肉腫の悪性化におけるVASH2の作用メカニズムを理解するために重要な成果であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度に計画していた実験を遂行し、横紋筋肉腫細胞におけるVASH2の発現がin vitro のスフェロイド形成とin vivo の腫瘍形成能に影響を与えることを新たに見出すことができた。また、バキュロウイルス発現系による精製蛋白を用いた生化学的解析により、VASHはSVBPと複合体を形成することでリン脂質との結合性に変化が生じることを新たに見出すとともに、質量分析によりVASHの基質蛋白であるチューブリン以外の機能性蛋白も同定することが出来た。いずれも本研究の目的達成のための重要な成果であり、現在まで順調に進展していると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)横紋筋肉腫の悪性化におけるVASH2の機能解析:これまでの結果を踏まえ、VASH2によるRH30細胞の微小管動態と細胞周期の進行に与える影響を調べると共に、マイクロアレイ解析によりVASH2の発現レベルに連動して変化する遺伝子を網羅的に解析する。加えて、ルシフェラーゼ遺伝子を安定導入したRH30細胞をヌードマウスへ移植し、VASH2の発現の有無によって組織への浸潤や転移能に影響があるかどうかin vivo イメージングで解析する。また、VASH2のリン脂質結合性や脱チロシン化活性を欠失した変異体をRH30細胞に安定導入することによって浸潤や転移能に影響があるかどうか検証する。 (2)横紋筋肉腫におけるVASH及びSVBPに結合する蛋白の同定とその機能解析:細胞外或は細胞膜上に存在するVASH2結合蛋白を同定するため、ビオチンリガーゼとVASH2-SVBP複合体の融合蛋白をRH30細胞に処理し、ビオチン化された膜蛋白や細胞外因子を単離・同定する。同定された蛋白の中でがん細胞の浸潤や転移に関わると予想されるものについては、結合の特異性を確かめた後に、発現ベクターやsiRNAを作製し、RH30細胞の機能制御に対する影響を調べる。 (3)中和抗体・ドミナントネガティブ変異体・阻害ペプチド・アンチセンスオリゴ・siRNAによる横紋筋肉腫の悪性化に対する抑制効果の検証:(2)で実際に結合が確認された蛋白については、ドメイン構造の解析を進め、結合に必要なアミノ酸を同定して、阻害ペプチドとドミナントネガティブ変異体の作製を試みる。また、VASH2や結合蛋白に対するアンチセンスオリゴ・sRNAをRH30細胞の移植モデルに処理し、腫瘍形成能・組織浸潤・転移への影響を確かめる。
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Causes of Carryover |
国際学会への参加を見送ったことと論文投稿をおこなわなかったことが主な要因となり、次年度使用額が生じる結果となった。現在、論文投稿に向けた準備を進めており、今回の繰越額と次年度に論文投稿料として計上した額を合わせて、英文校正及び投稿を完了する計画です。
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