2019 Fiscal Year Research-status Report
横紋筋肉腫における血管新生制御因子Vasohibin2の機能解析と新規治療法開発
Project/Area Number |
18K07812
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鈴木 康弘 東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 助教 (60332277)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 横紋筋肉腫 / Vasohibin / SVBP / 微小管翻訳後修飾 / チューブリン脱チロシン化 / 血管新生 / がん微小環境 / がん悪性化 |
Outline of Annual Research Achievements |
αチューブリン脱チロシン化酵素VASH2を高発現している胞巣型横紋筋肉腫細胞株RH30を用いて、siRNAによりVASH2の発現をノックダウンした状況に応答して発現量が変化する遺伝子を次世代シーケンサーによるRNA-Seq解析を行った。その結果、サイトカインのシグナル伝達制御、リボヌクレオタンパク質、免疫応答に関わる因子群の変動が検出された。そのうち横紋筋肉腫において高率に活性化することが報告されているPKCファミリーの発現変動は、リアルタイムPCR法でも確認することが出来た。また、前年度アフィニティー精製と質量分析により同定した細胞骨格関連因子のクローニングを行い、VASH2-SVBP複合体との結合を生化学的手法で確認したが、直接的な結合は確認されなかった。 RH30とそのVASH2欠損細胞株(VASH2KO)をヌードマウスへの皮下移植実験を行い、形成された腫瘍組織内の変化を比較した。親株由来の腫瘍組織では、TUNEL染色陽性のアポトーシス領域が広範囲に確認され、腫瘍内に多くの血管が確認されるものの血管周囲はピモニダゾール陽性の低酸素状態だった。一方、VASH2KOの腫瘍組織は、親株と比してアポトーシス領域が顕著に減少しており、腫瘍内の血管周囲の低酸素状態が改善されていることが確認された。親株とVASH2KOの間で、血管安定化の指標の一つであるペリサイトの被覆状態に大きな違いは確認されなかった。また、in vivo移植実験に応用するために、ルシフェラーゼ遺伝子を導入したRH30細胞株を新たに作出した。ヌードマウスに移植したところ、ルシフェリンを腹腔内に投与することでルシフェラーゼ活性を検出することで腫瘍形成過程を経時的にモニタリングできる実験系を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
移植実験において、横紋筋肉腫のVASH2を欠損することにより腫瘍組織内の低酸素状態とアポトーシスが減弱され、がん悪性化に繋がる微小環境の改善効果があることを見出した。また、横紋筋肉腫細胞においてVASH2のノックダウンに反応して発現が変化する遺伝子群を新たに同定し、横紋筋肉腫におけるVASH2の役割と作用機序の解明につながる成果になると期待される。一方、前年度にアフィニティー精製によって分離したVASH2結合性蛋白群については、複数クローニングを進めたが、まだ直接的結合を証明できた蛋白はない。目的達成のための重要な成果を得つつも、蛋白間のネットワーク解明に向けた解析にやや遅れがあると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)横紋筋肉腫の悪性化におけるVASH2の機能解析: RNA-seqのデータを元にVASH2の発現レベルに応答して変化した遺伝子群のネットワークを検証し、横紋筋肉腫の悪性化に関わる遺伝子を明らかにする。ルシフェラーゼ遺伝子を安定導入したRH30細胞をヌードマウスへ移植し、VASH2の発現の有無によって組織浸潤や転移能に影響があるかどうかin vivo イメージングで解析する。 (2)横紋筋肉腫におけるVASH2及びSVBPに結合する蛋白の同定とその機能解析:ビオチンリガーゼとVASH2-SVBP複合体の融合蛋白を精製し、RH30細胞に処理してビオチン化された蛋白を単離・同定する。同定された蛋白の中でがん細胞の浸潤や転移に関わるものは、発現ベクターやsiRNAを作製し、RH30細胞の増殖・浸潤能に及ぼす影響を調べる。 (3)中和抗体・ドミナントネガティブ変異体・阻害ペプチド・アンチセンスオリゴ・siRNAによる横紋筋肉腫の悪性化に対する抑制効果の検証:(2)で実際に結合が確認された蛋白については、ドメイン構造の解析を進め、結合に必要なアミノ酸を同定して、阻害ペプチドとドミナントネガティブ変異体の作製を試みる。VASH2或いは結合蛋白に対するアンチセンスオリゴやsiRNAをRH30細胞の移植モデルに処理し、腫瘍形成能・組織浸潤・転移への影響を確かめる。
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