2019 Fiscal Year Research-status Report
神経細胞特異的なロコモーション移動におけるSrcファミリーキナーゼの役割
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18K07827
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Research Institution | Tohoku Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
西村 嘉晃 東北医科薬科大学, 医学部, 助教 (50508603)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川内 健史 公益財団法人神戸医療産業都市推進機構, その他部局等, 研究員(上席・主任研究員クラス) (60397544)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 神経細胞移動 / ロコモーション移動 |
Outline of Annual Research Achievements |
大脳皮質形成過程において、脳室帯を出た神経細胞はまず多極性細胞になり、その後極性を獲得して一本の先導突起を持つロコモーション細胞となって脳表層までの長い距離を移動し、整然とした層構造を形成する。この神経細胞移動のうち、最も長い距離を占めるロコモーション様式の移動は、正常に機能する脳を作る上で極めて重要な過程であるにも関わらず従来直接的な解析が難しかった。申請者は独自の観察-解析系を確立し、Srcファミリーキナーゼがこの移動に重要な役割を果たしていることを示してきた。Srcファミリーキナーゼは、がん遺伝子として単離され様々な細胞現象に関わることが知られているが、脳におけるその主要な基質はロコモーション移動に関与しないことから、このキナーゼがどのようにしてロコモーション様式の移動を制御しているかは不明であった。本研究では大脳皮質のスライス培養法や超解像顕微鏡レベルでの細胞内小器官の動態解析、生化学的手法などを用いて、Srcファミリーキナーゼがロコモーション様式の移動をどのように制御しているかを、その上流・下流の経路まで解析して、脳形成における役割を明らかにすることを目的とする。本年度は、子宮内エレクトロポレーション法を用いて胎生期の大脳皮質にSrcファミリーキナーゼの上流であるCskのRNAiベクターを導入した。数日後、遺伝子導入された大脳皮質をミクロトームでスライスし顕微鏡下で観察したところ、ロコモーション移動が障害されることが分かった。さらに、Srcファミリーキナーゼの一つであるFynの恒常活性型を導入した場合にも移動に異常がみられ、CskはSrcの活性抑制に働くことから、正常なロコモーション移動にはSrcファミリーキナーゼの適切な活性調節が必要であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Srcファミリーキナーゼの機能抑制によって移動のどの段階が異常になるかの解析として、子宮内エレクトロポレーション法を用いてEGFP発現ベクターおよびSrcファミリー関連分子のRNAiベクターを共導入した大脳皮質を振動刃ミクロトームでスライスし、これを顕微鏡下で観察した。その結果、Srcファミリーキナーゼの上流分子Cskがロコモーション移動の制御に関与していることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
Srcファミリーキナーゼの既知の基質について、Srcファミリーキナーゼと相互作用するかどうかを大脳皮質の初代培養神経細胞を用いた免疫沈降法で確認する。相互作用が確認された分子について、子宮内エレクトロポレーション法を用いてEGFP発現ベクターをRNAiベクターと共導入した大脳皮質をミクロトームでスライスする。培養装置付顕微鏡下でスライス組織片を撮影してロコモーション細胞をタイムラプス観察し、Srcファミリーキナーゼを阻害したときの表現型と比較する。また、子宮内エレクトロポレーション法でEGFP-tubulinやEGFP-actinを共導入した大脳皮質をスライス培養し、微小管やアクチン細胞骨格の動態を観察する。ここでSrcファミリーキナーゼや下流候補分子を阻害したときの影響を観察し、形態変化への影響を評価する。さらに、子宮内エレクトロポレーション法でオルガネラ局在型のEGFPを導入した大脳皮質を超解像顕微鏡で観察する。
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Causes of Carryover |
学内業務が忙しく、予定していたスピードで動物実験を進められなかった。また、年明けに発注した機器が年度内に間に合わなかったことから次年度使用額が生じた。次年度は並行作業するサンプル数を増やすことにより、当初予定していた助成金と合わせて使用する。
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Research Products
(1 results)