2018 Fiscal Year Research-status Report
BSIによる複雑心奇形の心血管内血流解析―血流特性と心機能の相互作用の解明―
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18K07835
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Research Institution | National Center for Child Health and Development |
Principal Investigator |
林 泰佑 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 器官病態系内科部, 医師 (70597129)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 心臓超音波検査 / 血流解析 / 先天性心疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、新しい超音波血流可視化技術であるBlood Speckle Imaging (BSI)を用 いて、心内および血管内の血流解析を行い、複雑心奇形の小児の管理における新しい超音波評価指標を確立することを目指すものである。BSIは平成29年度下半期に超音波診断装置への搭載が開始された、最新の血流可視化技術であり、世界的に見ても臨床応用の報告は未だにほとんどなされていない。 研究初年度であった平成30年度は、まず正常小児を含む多数の小児例を対象に、心室内および大血管内の血流をBSIを用いて観察した。BSI法の特性や臨床応用の可能性、またその限界について検討し、次年度以降の研究の展開につなげていく方針で研究を進めた。 その結果、BSIを用いることにより、新生児から体重20 kgくらいまでの小児において、二次元の血流情報が極めて容易に得られることが示された。心尖部四腔断面像および心尖部長軸断面像での左室内の正常血流パターン、大動脈弁を通過する血流の正常パターンについて重要な治験を得た。 また血流の観察には、適切な断面の設定が不可欠であることを確認した。断面を貫く血流が多ければ、意味のある画像は得られず、関心のある血流と平行な断面で観察する必要があり、引き続き検査担当者の技術向上に努めなければならない。 BSIは二次元という制限はあるものの、日常臨床での使用が極めて容易であり、様々な流体力学指標が算出できるようになれば、BSIの可能性は非常に大きいと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
BSIを用い、正常小児において、拡張期に左室内に形成される大きな渦流を検出した。僧帽弁を人工弁に置換した小児では、渦流の向きが正常と逆になったり、全く形成されないことが明らかとなった。正常の大動脈弁を通過する血流は、収縮期にはほぼ一方向にそろっているのに対し、大動脈弁が二尖で狭窄がある場合は、ジェット血流によりバルサルバ洞内に異常な渦流が形成されることが明らかとなった。これらはいずれも血流解析におけるBSIの可能性を示す成果である。 一方で、大動脈縮窄やノルウッド術後のreconstructed aortaでみられるような、複雑な三次元の血流の評価は難しいことも分かった。また、僧帽弁逆流のような極端に速い血流もBSIでは扱えないことが判明した。
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Strategy for Future Research Activity |
僧帽弁位人工弁の血流や大動脈弁狭窄の血流に注目して、解析を進めていきたい。 複雑心奇形の心室内血流についても、多数例でBSIによる観察を行い、臨床応用の可能性を検討したい。
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Causes of Carryover |
研究初年度は、正常小児例を含む多数の症例で、BSIを用いて心内血流を可視化し、BSI研究の実現可能性やBSIが有用と考えられる疾患群を明らかにすることに主眼を置いた。そのため、予定よりも支出額が少額となった。 次年度は、特定の疾患群に焦点を絞り、BSIを用いた血流解析の有用性を明らかにする。流体力学的指標を算出するプログラムの作成や、国内外の学会発表に予算を支出する予定である。
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Research Products
(2 results)