2020 Fiscal Year Research-status Report
BSIによる複雑心奇形の心血管内血流解析―血流特性と心機能の相互作用の解明―
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18K07835
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Research Institution | National Center for Child Health and Development |
Principal Investigator |
林 泰佑 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 器官病態系内科部, 医師 (70597129)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 心臓超音波検査 / 胎児心エコー検査 / ストレイン解析 / 先天性心疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度も、心臓超音波検査をベースに、先天性心疾患における血行動態を解明するための様々な研究を展開した。BSIについては、定量評価が難しいという課題が解決されておらず、研究の進捗をみなかった。前年度から引き続き行っていた主要体肺側副血行路を合併したファロー四徴症術後肺高血圧のリスク評価の研究成果は、国際英文学術誌上で論文を発表した。また、胎児心エコーにおけるストレイン計測の臨床応用の研究を進め、二つの成果を得た。一つはエプスタイン奇形の胎児における左室長軸方向ストレインと疾患の重症度の関係を調べた研究である。もう一つは、胎児心エコーでストレイン解析を用いて不整脈を診断する試みであり、臨床における有用性を示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度から引き続き、主要体肺側副血行路を合併したファロー四徴症患者を対象に、術後遠隔期に肺高血圧を起こすリスク因子を明らかにする研究を進めた。その結果、主要体肺側副血行路を合併したファロー四徴症の患者では、術前の混合静脈血酸素飽和度が低いことは、術後に区域性肺高血圧症を生じることの予測因子となることが明らかとなった。あらかじめリスクの高い患者を知ることで、区域性肺高血圧症の早期診断、適切なタイミングでの介入が可能になるので、臨床的にも有用な知見であり、国際英文学術誌に論文が掲載された。 また、ストレイン計測を胎児心エコーに応用する研究も進めた。第一に、エプスタイン奇形や三尖弁異形成の胎児を対象として、左室機能が予後を規定するかどうかを探る研究を行った。その結果、エプスタイン奇形および三尖弁異形成の胎児では、動脈管血流が逆行性であることが、良好な左室長軸方向の収縮能と関連していることが明らかとなった。これは、重症のエプスタイン奇形で、右室が血液を拍出できない場合、前負荷が左室に再分布して、代償的に左室の収縮が増強していることを反映していると考えられた。前負荷増大に対して左室長軸方向収縮能が増強して適応できるかどうかが、予後を規定する可能性があり、今後の検討課題と考えられた。第二に、ストレイン計測を用いて胎児不整脈を診断することを試みた。その結果、左室および右房のストレインレート曲線から、S波とA波が同定でき、その対応関係とA-S間隔を分析することにより、胎児徐脈性不整脈の診断が可能であることを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
胎児心エコーにおけるストレイン計測を応用した不整脈診断は、臨床的意義が大きいと思われる。現時点では徐脈性不整脈のみを対象とした解析を行っているが、頻脈性不整脈にも解析対象を広げて、胎児不整脈の新しい診断方法として確立したいと考えている。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主な理由は、新型コロナウイルス感染症の流行により、発表予定だった国際学会が相次いで中止となったことである。 今年度も、国際学会については参加が難しいだろう。学会発表を待たずして英文学術誌への投稿準備を進めていきたい。
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Research Products
(2 results)