2019 Fiscal Year Research-status Report
片側発症一卵性双生児の網羅的ゲノム解析による胆道閉鎖症の遺伝的素因の解明
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18K07844
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
別所 一彦 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (80423169)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 胆道閉鎖症 / 一卵性双生児 / エクソーム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
胆道閉鎖症の成因における遺伝的素因の有無を片側のみが胆道閉鎖症に罹患している一卵性双生児間でゲノム配列を比較することにより明らかにするため、3組の一卵性双生児から同意を得た後に血液を採取し、DNAの抽出を行なった。抽出したDNAを用いてwhole exome sequencingを行なったところ、胆道閉鎖症を発症した児のみが持っている変異の中で、3組に共通する変異は4つ認めた。その4つのうちnonsynonymousな変異を1つ認めたため、現在Sanger sequencingで変異を確認中である。一方で胆道閉鎖症を発症しなかった児のみが持っている変異の中で、3組に共通する変異が1つ見つかったが、Sanger sequencingで確認したところシークエンスエラーであることがわかった。 次に変異の場所は異なっているが、3組に共通して変異を検出した遺伝子の解析を行なった。その結果、胆道閉鎖症を発症した児のみに共通する5候補遺伝子、胆道閉鎖症を発症しなかった児のみに共通する3候補遺伝子を同定したため、胆道閉鎖症の発生に関与する候補遺伝子と考え、それらの変異をSanger sequencingで確認している。さらに胆道閉鎖症の発生にはcopy number variantsの関与も報告されているため、解析を進めている。 ホルマリン固定パラフィン包埋胆管組織からのDNA抽出に関しては条件検討が済み、今後そのDNAを用いて、whole exome sequencingを行う予定である。 研究の結果、胆道閉鎖症の遺伝的素因を担う遺伝子が同定されれば、現在外科的治療しかない当疾患に対する病態に基づいた治療法の開発に資すると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
患者家族からの同意取得、双胎から得た血球由来ゲノムの比較は、胆道閉鎖症感受性を担う候補遺伝子が得られ、現在sanger法による配列の確認及び、in silico解析を用いた絞り込みを行っている。また他施設で一卵性双生児の胆道閉鎖症児が診療されていることが判明し、患児および非罹患同胞から検体を得るために、該当施設で研究の倫理申請中である。パラフィン包埋胆管上皮細胞よりのゲノム抽出に関しては、少量の組織よりの良質なDNA抽出条件のための検討に困難を要したが、目的に沿う検体が得られたためエクソーム解析を行う。一方で乾燥ろ紙血よりの高品質なゲノムDNAの抽出に関しては、条件検討を継続おり、条件検討が済み次第、患者検体を用いた解析を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
血球由来ゲノムDNAおよび、胆管上皮細胞由来DNAを用いた胆道閉鎖症罹患および非罹患一卵性双生児間でのゲノム配列の比較については、候補遺伝子の絞り込みを続ける。一方で乾燥濾紙血から抽出したDNAでは、現状ではエピジェネティクスによる影響を網羅的に解析するに十分な質と量を得ることが困難である事が判明し計画を縮小することも含め検討している。
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Causes of Carryover |
乾燥濾紙血より抽出したDNA検体を用いたメチローム解析を行う予算を計上していたが、サンプル調整に難航し、解析に至っていない。またヒト血液および胆管上皮より抽出したDNAの解析から得られた胆道閉鎖症感受性候補遺伝子の病態を、動物モデルを用いて検証することを予定していたが、現在米国の小児病院と共同研究を検討中で発注に至っていない。研究打ち合わせのために予定していた海外出張はCOVID-19の影響でキャンセルとなったため旅費も減額となっている。 2020年度には乾燥濾紙血よりのDNA抽出に関し外注委託も含めて再検討するとともに、現在得られつつある胆道閉鎖症感受性候補遺伝子の動物モデルを用いた検証のための共同研究を実施する。
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