2020 Fiscal Year Research-status Report
片側発症一卵性双生児の網羅的ゲノム解析による胆道閉鎖症の遺伝的素因の解明
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18K07844
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
別所 一彦 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (80423169)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 胆道閉鎖症 / 一卵性双生児 / 一塩基多型 / コピー数多型解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、当院では片側のみが胆道閉鎖症を発症している一卵性双生児3組の診療を継続している。本研究では、一卵性双生児の末梢血から抽出したゲノムDNAを用いて全ゲノム配列解析(WES)を行い、胆道閉鎖症罹患児と非罹患児の多型を一卵性双胎間で比較することにより、胆道閉鎖症の遺伝的感受性因子を明らかにすることを目的とする。 まず、3組の一卵性双生児の末梢血からDNAを抽出し、WESで解析・比較した。3組の双生児の一塩基バリアント(SNV)の一致率を算出したところ、3組とも97.71%以上の一致が得られ、これらの双子ペアが一卵性双胎であることが確認された。次に、双子のペアごとに、胆道閉鎖症を持つ児にのみ現れる一塩基多型と影響を受ける遺伝子を特定して比較した。その結果、3組の双子に共通して存在するバリアントや影響遺伝子は見つからなかった。同様に、双子のペアごとに、非罹患児の個人にのみ現れる一塩基多型と影響遺伝子を特定した。しかし、やはり3組すべてに共通する一塩基多型や影響遺伝子は見つからなかった。次に一卵性双胎間でコピー数多型解析を行ったが、3組に共通するコピー数多型を認めなかった。最後に、過去の研究で胆道閉鎖症との関連が報告されているいくつかの候補一塩基多型を双胎間で比較した。しかし、やはり双子の間で異なる一塩基多型は認めなかった。 一方で、対象罹患児の葛西手術時摘出胆管組織を入手しゲノムDNAを抽出したが、全ゲノム配列解析を行うに十分な質の検体が得られなかった。 現在、倫理審査の承認を受けた共同研究施設で、ひと組の一卵性双生児の検体の提供を受ける予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
共同研究機関での研究計画の倫理審査に時間がかかり、検体の入手が想定より遅れた。 血球由来DNAの解析は終了できたが、ホルマリン固定パラフィン包埋 胆管組織からWESに使用できる質のゲノムDNAの抽出条件を検討したが、十分な質のDNAは得られなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年6月中に提供予定の、共同研究施設よりの血液検体を用い、WESを行い、4組目の一卵性双胎として、現在の3組の双胎のデータと比較する。 またこれまで双胎ペア間で共通する一塩基多型、コピー数多型を認めていないが、個々の双胎間では180~470遺伝子にまたがる200~600塩基の多型を認めており、胆管の発生、免疫の異常など胆道閉鎖症発症の機序としてこれまで報告されている生理作用に関連する遺伝子をin silico解析により同定する。 今回の研究で得られた、血球由来DNAのWESデータ、胆管組織由来のDNA検体は、十分な管理下で保管する。
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Causes of Carryover |
共同研究施設での研究計画の倫理審査に時間がかかり、解析対象のゲノムDNAの調整に時間がかかった。また2021年度に新たに共同研究施設より検体の提供を受ける予定であり、その解析費用を見込んでいる。
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