2019 Fiscal Year Research-status Report
タイチン分解酵素を阻害するDuchenne型筋ジストロフィーの新しい治療標的
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18K07845
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
粟野 宏之 神戸大学, 医学研究科, 准教授 (30437470)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 筋ジストロフィー / カルパイン |
Outline of Annual Research Achievements |
神戸大学医学部附属病院に通院し、DMD遺伝子検査にて確定診断されたDuchenne型筋ジストロフィー(DMD)患者、Becker型筋ジストロフィー(BMD)と診断された患者の骨格筋からmRNAを抽出した。mRNAを逆転写反応にてcDNAに変換し、カルパイン関連遺伝子発現について検討を行った。コントロールとして購入した健常人の筋mRNAを用いた。遺伝子発現の内部標準にはGAPDHを用いた。発現の検討はサイバーグリーンを用いたリアルタイムPCRシステムで行った。配列の相同性が高いカルパイン1,2のRT-PCRに用いるプライマーは2018年の検討で決定したものを用いた。 DMD4人、BMD3人の解析をおこなった。健常人での発現を1とした場合、カルパイン1はDMD患者で約1-2.5倍の変化、BMD患者で0.4-2.0倍の変化を認めた。カルパイン2はDMD患者で約1.5-3.0倍、BMD患者で0.3-2.5倍の変化を認めた。これらの結果から、DMD患者では筋蛋白消化酵素であるカルパインが健常人にくらべ発現が増加していることがわかった。次にカルパインを阻害するカルパスタチンの測定では、DMD、BMDともに健常人に比べ発現が低下していた。カルパイン1/カルパスタチン比を計算すると、DMD患者の25%とBMDの33%比が1.0より低く、カルパイン1発現に対し、カルパスタチン発現が亢進している傾向がみられた。カルパイン2/カルパスタチン比の検討でも同様の傾向がみられ、筋ジストロフィー患者の骨格筋におけるカルパイン1,2の発現亢進に対して、抑制系の機能が作用していることが明らかになった
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究に使用する骨格筋検体で保存状態が良好でないものがおおく、RT-PCRに使用するためのmRNAの抽出が困難である場合がある。
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Strategy for Future Research Activity |
検体数を増やし同様の検討を行う。年齢、運動能力、生化学データ、生理検査、骨格筋画像検査などの臨床データと比較し、DMD/BMDにおけるカルパイン発現の病態的意義について検討する。
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Causes of Carryover |
2019年度ではRT-PCRを用いた実験を終了させ、その結果をもって蛋白解析の実験に取り組む予定であったが、検体の入手やサンプルの調整などの問題でRT-PCRの実験を終了させることができなかった。このため、この後の実験に使用する予定であった助成金を2020年度に繰り越すこととした。
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