2020 Fiscal Year Research-status Report
KLF4遺伝子が制御する脂肪分化抑制機構の解明と新規骨再生治療戦略の確立
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18K07846
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
宮本 憲一 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 助教 (00424185)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 間葉系幹細胞 / KLF4遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ヒト骨髄由来単核球細胞からCD90およびCD271共陽性細胞を単一細胞から培養して得られる増殖能、脂肪・骨分化能の異なる3つのサブタイプ(REC, MEC, SEC)の中から、転写因子をコードするKruppel-like factor 4(KLF4)遺伝子が最も高発現しているヒトMSCサブタイプ(MEC)を用いて、間葉系幹細胞におけるKLF4の機能を解析し、またそれによって制御される分化制御の分子メカニズムを解明することが目的である。そのために、KLF4遺伝子を発現抑制したMEC(KLF4-KD MEC)を作製し、MSCにおけるKLF4遺伝子の機能解析を行ってきた。 本年度は前年度に引き続き、データベースに登録されているKLF4遺伝子を強制発現させたMSCを用いたマイクロアレイのデータを解析し、KLF4-KD MECにおける遺伝子発現解析を進めた。その結果、前年度明らかにしたTGFβレセプター以外にも、骨髄ストローマ細胞に特徴的な遺伝子群の発現量に顕著な増減が認められた。このことから、KLF4は骨髄間葉系幹細胞の性質維持に寄与していることが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでの研究結果から、KLF4遺伝子の発現抑制によって細胞増殖の促進、および脂肪・骨分化効率が上昇することがわかっている。そこで、発現抑制実験の裏付けとして、KLF4遺伝子の強制発現実験を試みた。これによって細胞増殖は抑制され、脂肪・骨分化も抑制されることが予想されたが、実際は強制発現により細胞死が誘導されるという結果であった。このことから、KLF4遺伝子の強制発現による検証実験は困難であり、別の方法を模索する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究結果から、KLF4遺伝子の発現抑制によって脂肪分化誘導における脂肪滴の形成、および骨分化誘導におけるカルシウムの沈着がコントロールに比べより早期にみられることがわかっている。したがって、今後の研究については、既存のマイクロアレイデータを基にした遺伝子発現量解析データと細胞内シグナルデータを照合し、KLF4遺伝子の影響を受ける分化制御に関与するシグナルパスウェイについて解析を進める。
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Causes of Carryover |
本研究課題の申請当初は、MSCにおけるKLF4遺伝子の強制発現実験により脂肪分化においてのみその影響が見られたことから、KLF4は脂肪、骨分化のスイッチングタンパク質として機能しているという仮説のもとに進めていた。しかし、その後の研究により、KLF4遺伝子の発現量低下は脂肪、骨分化ともに分化誘導効率が上昇するという結果が得られた。そこで、再度、MSCにおけるKLF4遺伝子の強制発現実験を行ったところ、KLF4の過剰発現によりアポトーシスが誘導されるという結果であった。この結果から、KLF4遺伝子の強制発現によるこれまでの裏付け実験は困難であり、再度研究方針を見直す必要が生じた。 したがって、生じた次年度使用額は研究方法の立て直しに必要な試薬等、消耗品の購入に当てる。
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