2019 Fiscal Year Research-status Report
重症不整脈を引き起こす心Naチャネル変異における新生児型バリアントの影響
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18K07858
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
古谷 喜幸 東京女子医科大学, 医学部, 研究生 (10424673)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
羽山 恵美子 東京女子医科大学, 医学部, 非常勤講師 (00349698)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | SCN5A / LQT3 / 疾患iPS細胞 / 心筋細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、研究1「Nav1.5発現細胞を用い変異によるNa電流の変化を検討」を引き続き進めるため、Nav1.5野生型及び変異を恒常的に発現する哺乳類細胞の作製を実施した。昨年度、野生型(成人型、新生児型)のSCN5A遺伝子にそれぞれc.4868G>A (R1623Q)変異導入した哺乳類発現ベクター計4種類を作製した。これらの発現プラスミドをそれぞれ293T細胞に導入し、ハイグロマイシン選択により、Nav1.5成人型3クローン、Nav1.5成人型-R1623Q変異 3クローン、Nav1.5新生児型-R1623Q変異 3クローンを作製できた。Nav1.5新生児型クローンのみがやや遅れているが、候補細胞はすでに複数調製済みで、パッチクランプ実験の日程待ちである。成人型Nav1.5発現細胞株とNav1.5成人型-R1623Q変異株用い、オートパッチクランプ法により典型的な野生型Naチャネル電流の波形と不活性化が遅れる扇状の波形を示す変異Na電流波形を測定することができた。 研究2の「疾患iPS細胞分化心筋細胞を用いた機能解析」に関しては、当該研究室に凍結保存されていた不死化B細胞株を用いて、昨年度R1623Q変異をもつLQT3患者1名のiPS細胞を作製したのに続き、今年度2例目のR1623Q変異患者のiPS細胞を作製した。これらの樹立iPS細胞の3胚葉組織分化能を確かめるために、テラトーマ形成実験を実施した。また、心筋細胞への分化誘導も複数回実施し、心筋細胞分化法や心筋細胞の濃縮法を改良した。これらのiPS細胞から分化させた心筋細胞を用い、MED64システムによる電気生理学的実験を、主に健常者分化心筋細胞を用いて、非選択的β作動薬であるイソプロテレノールやhERGチャネル阻害剤のE4031への反応などの測定が可能になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究1 「Nav1.5発現細胞を用い変異によるNa電流の変化を検討」に必要なNav1.5野生型及び変異を恒常的に発現する哺乳類細胞(293T細胞)の作製を実施し、Nav1.5成人型3クローン、Nav1.5成人型-R1623Q変異 3クローン、Nav1.5新生児型-R1623Q変異 3クローンを作製できた。Nav1.5新生児型クローンがやや遅れているが、準備は順調に進んでいる。オートパッチクランプ法により成人-野生型と成人-R1623Q変異のNa電流の測定を実施できた。また、研究2の「疾患iPS細胞分化心筋細胞を用いた機能解析」を実施するために、R1623Q変異をもつ2番目のLQT3患者のiPS細胞を調製し、テラトー形成実験に進めた。また、心筋細胞への分化誘導法や濃縮法などを改良し、比較的安定に心筋細胞の分化が可能になった。これらのiPS細胞由来分化心筋細胞を用い、MED64システムを用いた電気生理学的実験が可能になった。よって、本研究に必要な細胞・技術など、順調に入手しつつあることから、概ね順調な進捗状況と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、研究1の「Nav1.5発現細胞を用い変異によるNa電流の変化を検討」を完成させるため、293T細胞Nav1.5安定発現株(成人型、成人型-R1623Q変異、新生児型、新生児型-R1623Q変異)各複数を用いて、オートパッチクランプ法によるNa電流の測定を進める。これにより、野生型と新生児型のSCN5A遺伝子におけるR1623Q変異の特徴を電気生理学的に明らかにする。 研究2の「疾患iPS細胞分化心筋細胞を用いた機能解析」のために、健常者とR1623Q変異をもつLQT3患者のiPS細胞から心筋細胞への分化を実施する。iPS細胞由来の分化心筋細胞を用いて、マルチ電極アレーシステム(MED64)を用いた電気生理学的特性の解析を行う。心電図のQT 間隔に該当する細胞外電位や拍動頻度を計測し、チャネルの変異によるQT 間隔延長などの評価を行う。薬理学的研究にもMED64 システムを用い、分化心筋細胞に様々なβ遮断薬・Na 遮断薬を種々の濃度で添加し細胞外電位等を測定し、その効果から患者に有効な治療薬の選択のための資料とする。 さらに、ゲノム編集法を用い、CRISPR/cas9 プラスミドに部位特異的遺伝子情報(ガイド)を組み込み、相同組換え用の遺伝子断片をもつターゲティングベクターを構築し、iPS 細胞に導入・クローニングする。これにより、R1623Q 変異を野生型に転換したiPS 細胞を得て心筋細胞とし、電気生理学的検討を行い、本変異が疾患原因であるとの確証を得たい。
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