2019 Fiscal Year Research-status Report
エクソーム解析で疾患原因不明の患者に対する新手法による原因解明の試み
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18K07864
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Research Institution | Kanagawa Children's Medical Center (Clinical Research Institute) |
Principal Investigator |
榎本 友美 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター(臨床研究所), 臨床研究所, 研究員 (20506290)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | イントロン変異 / トランスポゾン挿入変異 / 全ゲノムシーケンス / 先天性疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではエクソームシーケンス、染色体検査、CGHマイクロアレイ解析でも疾患原因変異がわからない先天性疾患症例を対象に、イントロン重要配列上の変異、トランスポゾン挿入変異等の探索を行っている。今年度はこれまでの解析にて原因変異が見つかっていない4名の患者の全ゲノムシーケンスを行った。4名中3名の患者は明らかに特定の疾患の表現型があるにも関わらず、その疾患原因遺伝子において変異がみつかっていない。よってイントロン領域変異、複雑構造変異等、通常のエクソーム解析で検出できない変異が存在する可能性がある。今年度、先進ゲノム支援として国立遺伝学研究所の解析チームに全ゲノムシーケンスのデータ解析支援をうけている。上記4名の患者の全ゲノムシーケンスについて支援チームと解析方針を固め、現在解析施行中である。具体的にはイントロン、遺伝子上流・下流領域の変異、複雑構造変異、リピート変異を想定した解析を行っている。原因候補変異が検出された場合は必要に応じ機能解析を行う予定である。またエクソーム解析にて、ルビンシュタイン・テイビ症候群の患者に、原因遺伝子であるCREBBP遺伝子のexon1上流にde novoの欠失がみつかった。ただしエクソーム解析ではexon1のcoding 領域は欠失しておらず、他の全exonにも異常は見つからなかった。よってCREBBP上流領域の欠失による疾患発症の可能性が強く示唆された。欠失範囲を詳細に調べるため全ゲノムシーケンスを行った。結果、エクソームシーケンスでは1つの欠失と思われたが、実際は間に正常2コピー領域をはさんだ2つの欠失からなる複雑構造変異であり、そのうちの1つの欠失がCREBBP の5’UTR領域の一部を含んでいることがわかった。本研究によりエクソーム解析のみでは解明できなかった患者の疾患発症メカニズムの詳細が明らかになった。現在論文を準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度はこれまでの解析(全エクソーム解析等)にて原因変異が見つかっていない4名の患者の全ゲノムシーケンスを行った。データ解析支援をうける国立遺伝研究所の解析チームと詳細な打ち合わせを行い、イントロン、遺伝子上流、遺伝子下流領域の変異、複雑構造変異、リピート変異を想定した解析を進めているところである。またCREBBP上流領域の欠失による疾患発症の可能性が強く示唆されたルビンシュタイン・テイビ症候群の患者について、全ゲノムシーケンスを用いた詳細な解析を行った。結果、エクソームシーケンスで検出された1つの欠失は、実は間に正常2コピー領域をはさんだ2つの欠失からなる複雑構造変異であり、そのうちの1つの欠失がCREBBP の5’UTR領域の一部を含んでいることがわかった。本研究によりエクソーム解析のみでは解明できなかった患者の疾患発症メカニズムの詳細が明らかになり、現在論文を準備中である。また全エクソームシーケンスを行った20症例においてトランスポゾン挿入変異の探索を行った。検出されたトランスポゾン挿入部位はイントロンもしくは劣性遺伝形式をとる遺伝子内の挿入等であり患者の症状に直接関連する変異ではなかったが、トランスポゾン変異探索も順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
全ゲノムシーケンスを行った4名の患者について解析を進める。また今後いくつかの症例について新たに全ゲノムシーケンス解析を行い、同様に解析を進めていく予定である。トランスポゾン挿入変異についても順次解析を進めていく。原因変異の候補が見つかった場合、その病態、変異に適した機能解析を行い発症メカニズムの解明を試みる。
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Causes of Carryover |
全ゲノムシーケンスは目的に応じショートリード方式、ロングリード方式(高額)のどちらかを選ぶ必要がある。現在ショートリード方式で4名の患者の解析を行っており、その結果を検討後、今後の方針を慎重に決める予定である。そのため全ゲノムシーケンスの予算の一部を次年度の研究費として使用する。
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Research Products
(2 results)