2018 Fiscal Year Research-status Report
脳型ジストロフィン分子ネットワーク解析を基盤としたてんかん標的分子の同定
Project/Area Number |
18K07883
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
藤本 崇宏 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (10446114)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 秀和 立命館大学, 生命科学部, 教授 (70273638)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ジストロフィン / Dp71 / BioID / 分子間相互作用 / 動物モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
脳に高発現するジストロフィン遺伝子産物Dp71が細胞内で相互作用する分子群を明らかにするために、生きた細胞内で相互作用分子群をビオチン標識する技術であるBioID法を駆使し、網羅的質量分析によって候補分子群を同定した。全長型ジストロフィンの筋細胞での分子複合体解析は精力的に行われてきた過去がある。しかしDp71の分子複合体の実体は未だ不明な点が多く、我々が得た候補分子群はそれを理解する上で手掛かりとなるかもしれない。そこで、候補分子群の中でも脳で機能すると予想される蛋白分子群を文献調査により絞り込み、それらをコードする翻訳領域全長cDNAをクローニングした。培養細胞におけるDp71との共発現系を用いた共沈降を指標とした二次スクリーニングを実施し、複数の陽性蛋白分子群を得るに至った。 検証実験の一つとして海馬神経細胞初代培養を用いた共沈降解析と、共局在確認のための細胞染色に着手したが、体系的な理解には二年目での検討を要する。 しかし興味深いことに、Dp71は特定の蛋白との相互作用依存的に蛋白動態が変動することを見出した。ジストロフィンは細胞骨格関連蛋白としての静的であるが細胞形態の維持に必須な役割が知られる。我々が観察しているダイナミックな蛋白動態変化は過去の報告にはなく、新規性の高い現象と考えられる。今後、その相互作用機序の詳細と、動態変動の生理的意義・病態との関わりを明らかにすべく本研究課題を継続する。 他方では、最大電撃けいれんモデル(MES)作製のための条件指摘化のため、複数週齢のマウスを用意し複数の異なる刺激電流値での処置を施し、マウスが示す強直性伸展けいれんを指標に条件を決定した。 また、ジストロフィンショートアイソフォームを特異的に検出可能な遺伝子改変マウスの作製に着手し、F0マウス2ラインの産出に至った。今後、生殖細胞系列への伝達を確認しコロニーを拡大して研究に供する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
BioID法を予定通り施行し候補分子群をリストアップしたが、質量分析の検出力が高いことが原因で、予想より数多くの候補が挙がった。そのため二次スクリーニングでの絞り込みや、今後の機能的な検証により慎重に分子間相互作用の真偽を確かめる必要がある。 計画立案時では野生型マウスを用いたけいれんモデル作製を予定していたが、ジストロフィンショートアイソフォーム特異的遺伝子改変マウスが順調に作製できる見込みが得られたため、このコロニーを拡大させることを優先し、順次けいれんモデル作製に供すことに変更した。この変更は将来的には特異性と検出力を高めた研究を可能にするものであり研究全体の進捗にプラスに作用するものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
Dp71相互作用蛋白候補群を対象に、海馬神経細胞初代培養系とマウス脳を材料として機能的な会合の有無を検討し、生理的意義・認知機能との関わり・けいれん病態での意義などの理解に繋げる。ジストロフィンショートアイソフォームを特異的に検出可能な動物モデルとして遺伝子改変マウスの作製に着手しF0マウス産出に至ったが、今後このマウスからF1世代を得ることで生殖細胞系列への伝達を確認しコロニーを拡大させて、研究に供する。このマウスは相互作用分子群の検証のためのツールになるとともに、薬物けいれんモデルに供すことでジストロフィンショートアイソフォームの特異的かつ効率的な検出や動態追跡が可能となり、本研究課題を達成する上で重要な役割を担う。二年目の早期にMESと薬物けいれん時のDp71動態をスクリーニングし、どのモデルが最適かを判断することで無駄のない研究実施に努める。
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Causes of Carryover |
物品費に関して幾つかの品はキャンペーン価格での購入が可能であったため、予定額との差額として1027円の次年度繰越し金が発生した。 2019年度に消費税率が10%となる見込みであり、増税分の支払いに充填すると予定していた研究の遂行に支障が出ない。
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