2020 Fiscal Year Research-status Report
小児特発性ネフローゼ症候群の病態解明:発症機序における自己抗体の役割
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18K07887
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
高橋 和浩 帝京大学, 医学部, 講師 (60297447)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高里 実 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, チームリーダー (40788676)
三牧 正和 帝京大学, 医学部, 教授 (40392419)
磯島 豪 帝京大学, 医学部, 講師 (00568230) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ネフローゼ症候群 / 自己抗体 / 小児腎臓病 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は前年度に引き続き、①血中自己抗体の検出と、新たに②培養細胞を用いた細胞内シグナルへの影響について検討を行った。さらに③Human Angiopoietin-like 4(ANGPTL4)が小児特発性ネフローゼ症候群に果たす役割について検討を行った。 ①血中自己抗体の検出について:HEK293細胞を用いてネフローゼ症候群の患者の血清と正常コントロールの血清とを作用させ、細胞に結合した血清中の自己抗体の免疫グロブリンクラスは、IgGとIgMであることが判明した。結合はIgMの方がIgGよりも多く、IgMの抗体が主体であると考えられたが、正常コントロールでもHEK293への結合がみられたことから、HEK293細胞に結合する免疫グロブリン成分は患者および正常人のいずれにも存在することが示唆され、ネフローゼ症候群発症にはさらにもう一段階のステップを要すると考えられた。具体的な自己抗体の例として、血清をProtein Lカラムで生成した成分をwestern blottingにより検討したところ、抗アルブミン抗体の存在が示された。 ②培養細胞を用いた細胞内シグナルへの影響について:血清中の自己抗体がHEK293細胞へ結合する部位が不明であるものの、結合後のpathwayからもアプローチすることとした。その結果SAPK/JNK経路のリン酸化が患者血清添加でみられたことから、この経路の活性化がネフローゼ症候群発症と関連していることが示唆された。 ③ANGPTL4のネフローゼ発症に果たす役割について:近年、血中のANGPTL4が糖尿病性腎症の発症と関連するとする知見が集まってきていることから、患者血清(発症時・寛解時)と正常対象血清におけるANGPTL4を測定したが、病勢とANGPTL4値との関連を示すことはできなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本課題で用いるアッセイについて習熟している研究補助員が、補助員の事情で半年間業務を休む必要が生じた。業務を補完できる人員が見つからず、課題の遂行に支障をきたした状態が続いたため、研究課題進行に遅れを生じてしまった。現在補助員は研究補助業務に復帰しており、研究遂行上の懸念は消失した。
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Strategy for Future Research Activity |
①マウスポドサイト細胞株と自己抗体との結合を検討:ポドサイトに発現する分子をヒト由来の細胞で安定して発現する培養細胞が得られないことが研究進行の障害となった。新たにヒト由来で安定した細胞株を樹立することは困難が予想されるため、マウス由来の不死化されたポドサイトの譲渡をうけ、患者血清中の自己抗体との結合について改めて検討することにした。 ②自己抗体によるポドサイト内のシグナル伝達機構を解明:自己抗体の同定と並行して自己抗体が細胞へ結合した後のシグナル伝達経路を明らかにするため、リン酸化経路をアレイによって網羅的に解析する。アレイで候補となったシグナル経路は改めてwestern blottingでvalidationを行う。 ③抗アルブミン抗体がネフローゼ症候群発症に果たす役割の解明:高アルブミン抗体は陽性に荷電している。糸球体基底膜は陰性に荷電していることから、ネフローゼ発症時に糸球体のバリア機能が破綻する機序の1つである可能性もあり、高アルブミン抗体の病態に果たす役割を詳細に検討してゆく。
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Causes of Carryover |
①実験補助員が半年間休職したため、その間の人件費の支払いがなかったため。 ②実験補助員とともに行う実験が停滞したため消耗品の購入がほぼなかったため。 実験補助員とともに行う予定だった実験が、当該実験補助員の休職のために行うことができなくなり、その実験を復職後に延期した。このため、休職期間中には消耗品費をほとんど使用しなかった。 (休職期間に予定されていた実験の消耗品は、復職後に購入を順次行っている)
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Research Products
(24 results)