2018 Fiscal Year Research-status Report
動脈管開存症の原因となる転写因子群のシグナル伝達パスウェイの研究
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18K07889
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
羽山 恵美子 東京女子医科大学, 医学部, 非常勤講師 (00349698)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 動脈管 / シグナル伝達 / 転写因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ウサギを主な実験動物として用いる。しかし、ウサギ抗原を免疫染色するために適する抗体は市販品ではあまりない。抗TFAP2B抗体は、S社のものがウサギの動脈管に対して良い活性を示すことがわかり、今年度はTFAP2Bの発現分布を、ウサギ胎仔(未熟・成熟)の動脈管と主肺動脈・下行大動脈(対照)を用いて明らかにできた。一方、c-FOS抗体は市販品に好適なものは見つからず、HisタグをN末に結合したc-FOS部分ペプチドを大腸菌発現し精製して、マウスに抗原として投与し、ポリクローナル抗体の調製を進めた。C-FOS抗原を投与したマウスから、初期の抗血清が得られ、さらに抗原ペプチドを追加投与(ブースト)し、抗体活性を上げる作業を進めている。 研究2として、家兎(未熟・成熟)胎仔動脈管と主肺動脈、さらに高酸素処理、低酸素処理した家兎成熟胎仔動脈管と主肺動脈からトータルRNAを抽出し、RNA-seq解析を行った。ターゲット遺伝子のパスウェイ解析を行うためであるが、将来を見据えて、RNA-seqによる網羅的解析を選択した。現在、結果を入手したばかりであるが、これにより、パスウェイ解析を含めて網羅的に遺伝子の変動を検出できると期待している。RNA-seqの結果の一部であるが、家兎胎仔動脈管の未熟(E21)と満期(E30)の遺伝子発現を比較すると、E30でE21に比べて2倍以上増加した遺伝子は1733、逆にE30でE21に比べて2倍以上減少したものは3391あった。現在、GO解析並びにパスウェイ解析を行っており、さらに本研究においてターゲットとするTGFβパスウェイ遺伝子群の発現を抽出し解析している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、研究1に関しては、ウサギの未熟・成熟胎仔の動脈管とその周囲の大血管試料を用いて、本研究のターゲット遺伝子の一つであるTFAP2Bの分布を経時的に免疫染色法により観察できた。ウサギc-FOSのクローニングが終わり、抗体の調製のためのHis-tag-c-FOS部分ペプチドを作ることができ、抗体の調製も始めている。概ね順調である。 家兎(未熟・成熟)胎仔動脈管と主肺動脈、さらに高酸素処理、低酸素処理した家兎成熟胎仔動脈管と主肺動脈のRNA-seq解析を実施できたことから、研究2のRNA-seqパスウェイ遺伝子の解析のために、パスウェイに属する遺伝子の発現量を比較検討することができるようになった。また、RNA-seqの情報は、研究3の転写因子複合体の同定のためにも、候補遺伝子の目安をつける点で役に立つと考える。これは、初年度としてはよい進捗状況であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
研究1の本研究のターゲット遺伝子の一つであるPRDM6の動脈管における発現分布を検討するために、抗体を探索したところ、市販品には適当なものが見つからなかった。そこでPRDM6のコード領域をクローニングし、全塩基配列又は一部塩基配列に、HisタグをN末又はC末に結合したPRDM6ペプチドを大腸菌発現し精製して、マウスポリクローナル抗体の調製を実施する。 研究2のパスウェイ遺伝子の解析のために、RNA-seqの結果を十分に吟味・利用する。主要な遺伝子については、定量PCR法により発現を確認する。 研究3 転写因子複合体の同定のために、対象遺伝子(ベイト)をクローニングし、タグ(GSTなど)をつけて哺乳類細胞(293T細胞など)で発現・精製し、ウサギ満期胎仔動脈管(全又は核)抽出タンパク質とインキュベーションして、共沈するタンパク質をSDS電気泳動法により分離する。このため、ベイト遺伝子のクローニングをまず進める。C-FOSはすでに入手したので、HSP70、TFAP2B、PRDM6をクローニングし、タグをつけて、まず293T細胞や ラット平滑筋細胞株(A7r5)などの哺乳類細胞で発現させ、細胞内局在を確認する。続いて、GST融合タンパク質を用いたプルダウンアッセイにより相互作用するタンパク質の探索に進みたい。 動脈管の発達は、時期・部位特異的にエピジェネティックな転写制御を受ける可能性がある。一般にプロモーター領域のメチル化が増加すると、その遺伝子の発現は抑制される。研究4のプロモーターアッセイのために、対象遺伝子(TFAP2B, PRDM6, c-FOS, HSP70)のプロモーター領域について、まず通常のシークエンス解読を行いたい。最終的には、未熟・成熟胎仔動脈管のゲノムのバイサルファイト処理とシークエンス解読を行い対照と非処理と比較し、転写因子の活性化について検討したい。
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