Outline of Annual Research Achievements |
若年発症糖尿病の遺伝的背景を明らかにする研究である。若年発症の自己抗体陰性糖尿病には、MODYに代表される遺伝性糖尿病と、その他の若年発症2型糖尿病が存在する。先行研究で、頻度の高いMODY遺伝子に変異を認めない症例において、ミトコンドリア遺伝子異常のヘテロプラスミーが増加していることを示唆する結果を得ていたため、より系統的に検討した。まず、臨床的に遺伝性糖尿病の可能性があると考えられた若年発症糖尿病の家系発端者387名に対して、より包括的に既知遺伝子異常を同定し、陰性の症例についてミトコンドリア遺伝子異常を検索することとした。まず、母系遺伝の場合はミトコンドリアm.3423A>Gを除外したうえで、Ion-PGM次世代シーケンサーを用いて、下記の遺伝子のバリアントを解析した(ABCC8, CISD2, GATA4, GCK, HNF1A, HNF1B, HNF4A, INS, INSR, KCNJ11, NEUROD1, PCBD1, PDX1, PIK3R1, RFX6, WFS1, APPL1, ZFP57, FOXP3, NEUROG3, STAT3, PAX6, EIF2AK3, GLIS3)。またGCK, HNF1A, HNF1B, HNF4A遺伝子についてはMLPA法により欠失、重複の解析も行った。これにより、156名にP/LPバリアント、49名に病原性の可能性の高いバリアントを同定した。頻度の高いMODY遺伝子以外にATP感受性カリウムチャネル遺伝子(ABCC8, KCNJ11)変異を25名に同定した。興味深いことに、この中には従来先天性高インスリン性低血糖症の原因遺伝子変異とされる遺伝子異常を持つものが5名同定された。ついで、上記の検討で既知遺伝子異常を認めないもの8例、遺伝子異常を同定されたもの8名について、ミトコンドリア全長を3つのフラグメントに分けてPCR増幅し、それぞれのフラグメントをゲルから回収したのち、次世代シーケンサを用いてdeep sequencingを行った。予備検討の結果と異なり、本検討では明らかに2型糖尿病群でMODY群よりミトコンドリア異常が多いという仮説は証明されなかった。
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