2018 Fiscal Year Research-status Report
肝内胆管癌発生における代謝リプログラミングの分子機構
Project/Area Number |
18K07899
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木暮 宏史 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (60568921)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 弘明 東京大学, 医学部附属病院, 特任臨床医 (00814500)
立石 敬介 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (20396948)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 肝内胆管癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
IDH1/2はイソクエン酸を還元しα-ケトグルタル酸(α-KG)を産生する代謝酵素である。細胞内には100種類もの様々なα-KG依存性脱水素酵素が存在し、DNAやヒストンの脱メチル化酵素(TET、JMJ family)、低酸素因子HIF1αの分解酵素(EGLN)なども含まれる。IDH遺伝子変異による特異的産物としてα-KGから2-ヒドロキシグルタル酸(2-HG)が産生され、2-HGにより前述のα-KG依存性酵素群の活性が阻害される。その結果、細胞内エネルギー代謝のみならず、エピジェネティック遺伝子発現制御や血管新生などにも影響が及びうる。IDH変異は白血病やグリオーマと同様に胆管癌でも報告されたが、うち肝内胆管癌(Intrahepatic cholangiocarcinoma: ICC)のみに特異的であり、その約30%で認められる。共存する特定の変異も殆どないことから、IDH変異が一部のICCにとって排他的ドライバー変異の一つであると考えられるが、それを裏付けるICC発症への経過における生物学的意義や下流の標的分子はいまだ明らかではない。本研究では癌化前の正常肝内胆管細胞にIDH1変異を導入し、それが癌化のドライバーとしてどのような影響を持つかについて、標的遺伝子を同定するとともに、エピジェネテイクス制御機構とメタボロームへの影響の両面からその意義を明らかにすることを目指す。実績としてIDH1変異は正常肝内胆管細胞にエネルギー代謝のリプログラミングを誘導し増殖能を増加させることを見出している。その機構としてエピゲノムへの影響を介してエネルギー代謝の律速酵素の発現上昇を惹起し、代謝を変化させる可能性が考えられるため、本研究ではその分子メカニズムを解析する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究進捗として、IDH1変異が正常肝内胆管細胞にエネルギー代謝のリプログラミングを誘導し増殖能を増加させることを見出している。その機構としてエピゲノムへの影響を介してエネルギー代謝の律速酵素の発現上昇を惹起し、代謝を変化させる可能性が考えられるため、現在その分子メカニズムを解析中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
IDH変異特異的に発現が増加する代謝制御遺伝子候補につき、その酵素活性の上昇についても評価する。逆に酵素活性を阻害することで肝内胆管細胞に生じる影響を同時に解析する。これらの検討によりIDH変異により惹起される代謝変化とその生物学的意義のメカニズムを明らかにする。
|
Causes of Carryover |
マウス飼育匹数の若干の減少により食餌代が予定より若干減少したため。次年度の消耗品購入に使用予定。
|