2018 Fiscal Year Research-status Report
癌促進的RNA編集の分子ネットワーク解明と新規食道癌治療戦略の探索
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18K07910
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
増田 清士 川崎医科大学, 医学部, 教授 (00457318)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | RNA編集 / RNA結合蛋白質 / 食道扁平上皮癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
・癌促進的RNA編集が関わるRiboCluster内関連分子の網羅的同定と意義の解明 平成27年から平成29年度基盤研究(C)で作製したcsRBPリストおよび公共データベース(TCGAなど)を使用して作成した癌特異的発現・局在パターンがADAR1発現量と相関のある癌促進的RNA編集関連csRBP候補リストから、特に食道扁平上皮癌(ESCC)に着目し本研究課題で解析対象とするcsRBPとして3種類のRBPを同定した。また、ESCC細胞株パネル(44種類)を用いて、これら3種類のRBPのmRNA発現量及び蛋白質発現量を検討した。次に、csRBP関連RiboCluster内での、癌促進的RNA編集の調節標的RNAや相互作用するmiRNA・蛋白質の解析を以下の様に行った。 a)ADAR1ノックダウン細胞またはコントロール細胞で核と細胞質を分別し、csRBP特異抗体を用いた免疫沈降法でRNAを回収し(CLIP: crosslinking immunoprecipitation)、マイクロアレイでADAR1量によって影響を受ける結合変化mRNAリストを作成した。 b)ADAR1のノックアウト・ノックダウンや強制発現後の網羅的なmRNA発現変化を、マイクロアレイで解析し、発現変化mRNAリストを作成した。さらに、ADAR1量でcsRBPとの結合に影響があるがmRNA発現に影響の見られない遺伝子を抽出し、翻訳変化mRNA候補リストを作成した。 c)b)で作成した「発現変化mRNAリスト」を用いてpathway解析を行い、ADAR1によって制御される分子ネットワークを推定した。 以上の検討から、ADAR1は免疫応答に関与する遺伝子群やアポトーシス関連遺伝子の発現制御に関与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に計画していた「癌促進的RNA編集が関わるRiboCluster内関連分子の網羅的同定と意義の解明」としてcsRBP候補の抽出を行い、細胞解析用のツールとして最適な細胞株の選択が終了した。また、本研究課題の基盤データとなる「結合変化mRNAリスト」、「発現変化mRNAリスト」、「翻訳変化mRNA候補リスト」を作成することができた。これらのリストのうち「発現変化mRNAリスト」を用いて、Ingenuity pathway analysisプログラムでpathway解析を行った。この結果、ADAR1ノックダウン細胞では免疫応答に関与する遺伝子群の活性化、GADD45を含むアポトーシス関連遺伝子の活性化が確認され、当初の予定通り進捗している。一方、ADAR1の細胞内機能を解析するために、ゲノム編集技術を用いてADAR1ノックアウト細胞の作成を試みたが、細胞増殖が著しく抑制されたため樹立することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
1.本年度に作成したリストと、既知遺伝子情報、結合配列情報、miRNAデータベース、RNA編集配列情報(RADAR、REDIportalなど)を統合して、ADAR1-csRBP経路を中心とした発癌分子ネットワークを推定し、調節程度や方向(促進・抑制)に関わるmiRNAとパートナー蛋白質のネットワーク上の位置を決定する(癌促進的RNA編集分子マップの完成と癌促進的RNA編集関連治療標的候補の全体リストの作成)。 2.同定された調節標的mRNA、miRNA、蛋白質の中から、過剰発現やゲノム編集・ノックダウン系を駆使して表現型への関与を検討することで、RNA編集による発癌促進作用に必要十分な調節標的や相互作用分子を絞り込む(ESCC依存性を担う治療標的候補リスト) 3.2で得られた分子に関し、癌部・非癌部臨床検体での発現や発現パターンとその臨床病理学的意義を検討すると共に、不死化食道上皮でも上記の機能検討を行い比較することで、癌特異性を検証し、さらなる絞り込みを行う(ESCC特異的な治療標的候補リスト)。 これら一連の統合的、段階的解析により、RNAプロセッシング~翻訳調節から調節遺伝子産物の関連する細胞内パスウェイまでを網羅した癌促進的RNA編集関連分子のリスト化と絞り込みによる新規ESCC治療標的候補の同定を目指す。
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Causes of Carryover |
(理由) 本年度に実施する予定であった次世代シーケンス解析をマイクロアレイを用いた解析に変更したため、当初予定していたよりも安価で実施することができ、消耗品費およびその他の項目(解析委託費)で差額が生じた。さらに、情報収集目的に参加予定であった学会への出席を取りやめたため、旅費で差額が生じた。 (使用計画) 次年度は同定した調節標的mRNA、miRNA、蛋白質の表現型への関与について解析を行うため、本年度未使用であった助成金と次年度分として請求した助成金を合わせて必要な抗体や試薬の購入に使用する。
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