2018 Fiscal Year Research-status Report
肝線維化および肝発がんにおけるTLL1-TGFβ相互活性化機構の解明
Project/Area Number |
18K07915
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
堤 進 (浜田進) 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 研究員 (30367693)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松浦 健太郎 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (30580576)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 肝線維化 |
Outline of Annual Research Achievements |
C型肝炎治癒後(C型肝炎ウイルス排除後)数年経過後の肝発がんに関連するメタロプロテアーゼTLL1はTGFβ前駆体を活性型に変換する作用と、コラーゲン前駆体を切断し成熟コラーゲン繊維の産生を促進する作用を持つ。反対に、TGFβは初代肝細胞や肝星細胞においてTLL1自身の発現を誘導する。したがって、我々は当初、発がんに関連するTLL1遺伝子多型がTGFβ-TLL1相互活性化機構を増強し、線維化亢進を引き起こすことが肝発がんの原因であると考え研究を行ってきた。一方、詳細な解析の結果、TGFβによるTLL1発現誘導は12時間でピークに達すると速やかに収束するのに対し、TLL1ホモログであるBMP1の発現は長期間持続することがわかった。したがって、当初の予想と異なり、肝線維化に重要なのはBMP1であり、TLL1は補助的に作用することが予測された。一方、in vitroで培養した肝星細胞を継代するとTGFβを添加しない場合でも一過性のTLL1発現誘導が見られた。さらに、TLL1のプロテアーゼ基質として炎症や発がんに関連するサイトカインであるANGPTL2が報告されており、実際に精製TLL1がANGPTL2分子を切断することを確認した。以上から、詳細は不明であるが、TLL1は組織傷害とそれに起因する炎症反応に関連する可能性が出てきた。今後、TLL1発現ベクターによるTLL1遺伝子の強制発現、およびRNA干渉法によるTLL1遺伝子ノックダウン実験を行い、肝星細胞における炎症関連遺伝子やそれらがコードするタンパクがどう変化するかを突き止めることを計画している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
肝炎、肝線維化、肝発がんにおけるTLL1の機能は線維化促進そのものではなく、組織傷害や炎症など、一過性の速い生理現象に関連する可能性が出てきた。しかし、TLL1遺伝子発現を誘導するTGFβ以外のサイトカインやシグナル伝達は不明のままである。また組織傷害・炎症におけるTLL1の標的分子も不明であるため、これらを解明するための実験を行う必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
TLL1の発現を誘導する各種サイトカイン、シグナル伝達系の探索を行う。またTLL1によって切断されうる標的分子およびTLL1制御下にある遺伝子群を同定するため、TLL1強制発現およびTLL1遺伝子ノックダウン実験を行う。得られたサンプルを用いてmicroarray解析やプロテオーム解析を行い、TLL1制御下の遺伝子群およびTLL1標的分子の同定を試みる。
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Causes of Carryover |
TGFβによるTLL1遺伝子発現誘導が想定より短期間で一過性であったため、その詳細な解析を優先的に行い、TLL1活性測定実験を行わなかった。したがって消耗品予算が未使用となった。 次年度は、予定していたTLL1活性測定実験に加え、TLL1新規標的分子の探索のためのプロテオーム解析、マイクロアレイ解析に次年度使用額を充当する予定である。
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