2018 Fiscal Year Research-status Report
2-deoxy-D-glucose封入PLGAナノ粒子による肝癌治療開発
Project/Area Number |
18K07923
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
仁科 惣治 川崎医科大学, 医学部, 講師 (70550961)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原 裕一 川崎医科大学, 医学部, 講師 (60550952)
日野 啓輔 川崎医科大学, 医学部, 教授 (80228741)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 肝細胞癌 / 解糖系 / 2DG / PLGA |
Outline of Annual Research Achievements |
グルコース誘導体2-Deoxy-D-Glucose(2DG)は解糖系阻害剤であり、固形癌に対する有効性を示す一方で高用量では有害事象を認めた。そこで腫瘍選択的集積性や徐放性に優れた生体適合性高分子Poly(lactic-co-glycolic acid) (PLGA)ナノ粒子に2DGを封入した2DG-PLGA(平均粒子径;約150nm)を作成し、免疫不全なヌードマウス肝癌細胞皮下移植腫瘍や免疫応答性肝発癌マウス(STAMマウス等)に対して抗腫瘍効果と安全性を検討した。 肝癌ヌードマウスに対する2DG-PLGAナノ粒子の週1回投与は、2DG(原体)の連日投与と比べ実質的2DG総投与量が約9%程度だが有害事象なく有意に抗腫瘍効果を示した。 投与された2DG-PLGAの腫瘍組織への集積性を確認するため、2DG-PLGAと同剤形のPLGA内に蛍光色素(ICG)を封入したICG-PLGAを肝癌ヌードマウスに投与し、生体・腫瘍内分布の経時推移を観察した。投与直後から腫瘍へICG-PLGAは集積し投与7日目以降も腫瘍部集積は残存したが、他の生体組織への集積は認めなかった。 更に、免疫応答性肝発癌マウス(STAMマウス、DEN誘発肝発癌マウス)に対しては、免疫不全な肝癌ヌードマウスxenograftの結果と比べ更に低濃度(1/10量)の2DG-PLGAを投与しても強い抗腫瘍効果を認めたが、その腫瘍組織で強いCD3陽性T細胞浸潤所見を認め、2DG-PLGAによる腫瘍免疫活性化という新たながん進展抑制機序を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」に記載したように、当初の研究目標である「」は明らかな関連性は見出せなかった。しかし解析を進めた結果、(研究実績の概要に示したように)2DG-PLGAによる腫瘍免疫活性化という新たながん進展抑制機序を見出した。 以上の研究成果に対する新規の作用機序の検討を進めていくよう、計画を立て直した。 また、今後肝癌に対して中心的役割を果たすとされる免疫チェックポイント阻害剤(抗PD-1抗体)による治療効果も限定的である。その中で、解糖系阻害による腫瘍免疫活性化作用を有する2DG-PLGAは、免疫チェックポイント阻害剤に対する抗腫瘍効果増強剤であるのみならず同薬剤不応例に対する治療手段ともなりうる。そこで、抗PD-1抗体に対する2DG-PLGAの併用効果、および抗PD-1抗体不応がんモデルに対する2DG-PLGAの有効性を検討する計画に変更をすることとした。
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Strategy for Future Research Activity |
【2DG-PLGAによるT細胞性腫瘍免疫活性化機構の解析】 (A)免疫応答性肝発癌モデル(STAMマウスとDEN誘発肝発癌マウス)を用いて、肝腫瘍組織におけるT細胞の活性化(IFNγ産生)能を解析する。(B)Transwell(半透膜)を介して肝癌細胞±2DG-PLGAと共培養したT細胞の解糖系酵素活性/活性化能/細胞走化性を解析し、2DG-PLGAによる肝癌細胞の解糖系抑制がT細胞機能に及ぼす効果およびその作用機序を解析する。 【2DG-PLGAの抗PD-1抗体との併用効果及び抗PD-1抗体抵抗性モデルに対する有効性解析】 (A)免疫応答性肝発癌モデルとしてSTAMマウスとDEN誘発肝発癌マウスを使用し、抗腫瘍効果において抗PD-1モノクローナル抗体との併用効果を有するか否かを検討する。(B)2DG-PLGAが抗PD1モノクローナル抗体不応性腫瘍モデルに対する2DG-PLGAの抗腫瘍効果の作用機序として、腫瘍免疫が亢進するか否かをみるためCD3陽性T細胞浸潤能を免疫染色にて確認する。さらに、同マウスにおける2DG-PLGAによる抗腫瘍効果に対してCXCL(9,10,11)-CXCR3 axis を介したT細胞性腫瘍免疫の関与を明らかにするため、2DG-PLGAに抗CXCR3中和抗体を併用し抗腫瘍効果がキャンセルされるか否かを確認する。
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Causes of Carryover |
(理由) 次年度使用額が生じた理由としては、の結果が実験計画書の予想通りにはいかず、その結果として、以後の研究計画の内容に変更が生じたために、今年度の実験試薬等の物品費の使用状況が若干少なくなったことが挙げられる。 (使用計画) これらの金額と次年度に請求する研究費を合わせた使用計画としては、今回計画変更した内容に関する基礎研究を進めていくことと、研究成果の発表を含めた学会参加のための旅費に使用すること等を計画している。
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Research Products
(4 results)