2019 Fiscal Year Research-status Report
加齢に伴う幹細胞老化による胃発癌機構の3次元細胞培養に基づく解明
Project/Area Number |
18K07928
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
今谷 晃 東北大学, 医学系研究科, 教授 (30333876)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 胃粘膜萎縮 / 加齢 / 幹細胞老化 / 胃オルガノイド |
Outline of Annual Research Achievements |
加齢は胃癌も含め多くのがんの発症要因の1つである。胃においてはHelicobacter pylori感染に伴って、発癌母地と考えられている胃粘膜萎縮や腸上皮化生が進展する。この進展過程は、胃上皮幹細胞における分化維持機能低下によるものと解釈でき、慢性炎症に伴う幹細胞の老化の影響を受けていると類推できる。このため、本研究では若年と加齢マウス胃粘膜より幹細胞維持が可能である3次元細胞培養 胃オルガノイドの樹立を試みる。そして、幹細胞老化の観点から、胃粘膜萎縮や腸上皮化生進展のメカニズムを解明することを目的している。平成30年度においては、若年マウスの胃粘膜を用いて、マトリゲルや各種ニッチ因子の条件設定し、安定的にオルガノイド樹立のための実験系を確立した。その後、若年(8週齢)と加齢(52週齢)マウスより胃オルガノイド樹立を開始した。令和元年度は、実験を安定的に遂行する準備として、若年および加齢マウス各々5匹より胃オルガノイドを樹立、継代培養により細胞を増やし、ロットとして凍結保存しバンク化した。また、マウス不死化正常細胞GSM06のスフェロイドにおける胃幹細胞分化制御に関わるSox2とNotch1遺伝子の発現局在の検討を免疫蛍光染色でおこなった。そして、若年胃オルガノイドと加齢胃オルガノイドをマトリゲル内で培養し、3D内での細胞生存能(細胞増殖能)測定系を用いてin vitroで定量的に検討した。その結果、若年と加齢胃オルガノイドと間には、オルガノイドの大きさや細胞増殖能に差を認めた。さらにこの差は、細胞内シグナルの活性程度に依存する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和元年度内で、若年と加齢マウスの胃粘膜より各々胃オルガノイドを安定的に樹立する実験系を確立できた。また、胃オルガノイドによる分化制御遺伝子や幹細胞マーカーの発現程度を定量PCRと免疫蛍光染色で評価できる実験系も確立できた。これら実験系が確立できたことによって、定量的評価で若年と加齢由来の胃オルガノイドの細胞増殖能等に差があることを見出した。さらにこの差はある細胞内シグナルに依存することを明らかにできた。しかしながら、網羅的に遺伝子の発現を解析するために胃オルガノイドから比較的多量のRNA抽出が必要となるため、現在、実験方法の工夫をしている。
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Strategy for Future Research Activity |
若年と加齢マウス由来の胃オルガノイドにおける分化制御遺伝子・幹細胞マーカーの発現量を定量PCRで網羅的に解析を進める。そして、幹細胞老化誘導に関わる遺伝子を同定する。同定された遺伝子の発現局在について、免疫蛍光染色や免疫組織化学で検討する。さらに、加齢に関わる細胞内シグナルの活性化変化も検討する。
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Causes of Carryover |
令和元年度内に予定した分化制御遺伝子・幹細胞マーカーの網羅的解析が、胃オルガノイドからのRNA抽出量不足で遅れているため、新規の遺伝子やマーカーの発現を解析するのに必要な定量PCR用のプライマー・アレイプレート・1次抗体の購入を令和2年度に計画している。
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