2020 Fiscal Year Research-status Report
Effect of MCP-1 and sSiglec9 in the animal models of acute liver failure
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18K07936
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
石上 雅敏 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (90378042)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 急性肝不全 / 動物モデル / MCP-1 / sSiglec-9 / 炎症-再生相関 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はMCP-1+sSiglec9の2因子投与による急性肝不全モデル動物における生存率向上の直接の作用機序として主に肝再生促進について着目、検討を行った。 C57BL/6マウスに対し、2.0ml/kgの四塩化炭素(CCl4)投与による急性肝不全モデルマウスを使用。CCl4投与12時間後に薬剤介入し、36、48、60、72時間後にKi-67染色にて肝再生の評価を行った所、2因子投与群、control群とも血清ALT値に比例したKi-67染色の増強と、48、60時間後において強い発現上昇を認め、control群と比較して2因子投与群において発現上昇の強いことがわかった。また、48時間後においては2因子投与群ではcontrol群と比較して炎症抑制性マクロファージマーカーであるCD206、抗炎症サイトカインの一つであるTGF-βの発現増強が認められた。 また、炎症を介さない肝再生に対する2因子の直接作用を検討するため、肝切除ラットモデルを用いてKi-67発現を検討、肝切除後24時間ではKi-67発現はほとんど見られないものの、48時間で発現が認められるようになった。また、肝切除直後に治療介入として歯髄幹細胞培養上清(SHED-CM)を投与、control群と比較した所、2群に大きな差は認められず、SHED-CM,2因子の作用は抗炎症作用と協調的に働いていることが示唆された。 培養星細胞株であるLx-2において、SHED-CMの添加により、α-SMA発現の低下、HGF発現の上昇が見られることがわかり、星細胞を静止期に維持する作用があることが示唆された。また、SHED-CMの添加により、Hep-G2細胞のcell viabilityが促進されることが明らかとなり、肝細胞の再生促進を促す可能性があることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度は汎用性検討ということでCCl4急性肝不全モデルマウスにおける検討を行ったが、D-galactosamine誘発ラットモデルの際に見られた炎症惹起型から炎症抑制型マクロファージへの形質転換による抗炎症作用が2因子投与とcontrol群では予想よりも明確な差が見られなかった。原因としてはモデル内の大きなばらつき、ならびにCCl4肝不全モデルにおいてのマクロファージの関与の程度等が考えられ、現在生存率の向上や肝再生促進作用の増強との乖離を検討している所である。 また、2因子でうまく行かなかったモデルに対しては同時にそもそもの原点であるSHED-CMによるsSiglec-9、およびMCP-1以外の液性因子による作用発現の可能性も考慮しての検討も加えている。このため他モデルでの汎用性の検討に少し時間がかかっている。 また、現在同時進行にてin vitroモデルによる星細胞の静止期維持作用、および肝再生促進作用の検討も行っている。現在初代肝細胞作成のための条件設定、および、SHED-CM以外に2因子での条件設定に少し時間がかかっている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度については、モデルの汎用性として新たによりヒトでも起こり得る薬剤性急性肝不全モデルとして有名なアセトアミノフェン(APAP)誘発モデルを使用、2因子の効果を検証する。具体的にはモデルの確立(APAP投与量、2因子投与タイミング)を行った後、炎症関連(TNF-α,TGF-β,IL-6,IL-1β,PAI-1,iNOS,VEGF)、再生関連(HGF),および現在メカニズムの主作用として推定されている抗炎症性マクロファージマーカー(Arginase-1,CD206)の遺伝子発現、またTUNEL染色によるアポトーシス、およびKi67による肝細胞増殖マーカーの免疫組織学的発現を2因子投与群とcontrol群で比較検討を行う。また、これらがすでに肝局在のマクロファージであるKuppfer細胞のレベルで働いているのか、あるいは炎症によって動員される骨髄単球由来のマクロファージの働きであるのかも同時に検討していきたい。 再生メカニズムについては、動員される再生細胞が肝前駆細胞なのか、あるいは成熟肝細胞の分裂なのか、もしくはその両方なのかを明らかにするため前駆細胞のマーカーであるAFP,CK19発現、また成熟肝細胞のマーカーであるHNF-4α発現の遺伝子発現、およびKi-67との共染色による免疫組織学的検討を行っていく予定である。 また、肝再生時に重要な液性因子であるHGF分泌の主たる細胞としては星細胞、特に静止期の星細胞が考えられている。2因子投与による静止期、および活性化星細胞の動態をdesmin,α-SMAの発現の有無で評価し、control群と比較する予定である。 この新たなモデル確立、およびこれらの検討を2因子の他にSHED-CMでの検討でも予定していることから次年度使用額として計上を行っている。
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Causes of Carryover |
今年度は、本来の2因子の効果発現メカニズムと考えられる抗炎症、それに引き続く肝再生促進のステップがD-galactosamineとCCl4では違い、特にCCl4では個体間の差が大きいため、その原因検討に時間がかかり、その後の幹細胞活性化メカニズム検討でTWEAK-Fn14 pathway、Wnt3a-βcatenin pathway、HGF-MET pathway、また再生で動くと考えられる肝前駆細胞であるA6、EpCAM、成熟肝細胞マーカーであるHNF4α等の検討ができず次年度使用額が生じた。 次年度は、現在HepG2細胞で肝再生の評価をしているものの、癌細胞ではない初代肝細胞での評価、また、星細胞静止期維持の検討ではSHED-CM以外にも2因子での評価、またCCl4モデルの他にAPAPによる急性肝不全モデルマウスでも2因子、SHED-CMの効果を新たに検討する費用等としてこれらを使用する予定である。
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