2019 Fiscal Year Research-status Report
超保存領域に内在されたRNAメチル化スイッチと大腸がん進展の分子基盤
Project/Area Number |
18K07941
|
Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
桑野 由紀 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 講師 (00563454)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 大腸がん / RNAメチル化 / 超保存領域 / RNAプロセシング |
Outline of Annual Research Achievements |
マウス以上の高等生物にのみ100%保存されたゲノム配列、超保存領域(ultraconserved region: UCR)より転写されたRNA(Transcribed-UCR: T-UCR)群は、組織・疾患特異的に発現パターンを示すことが報告されている。なかでも、セリン・アルギニンスプライシング(SRSF)様調節因子TRA2B遺伝子より転写されたT-UCR(uc.138)は、大腸がんにおいて高発現し、がん細胞の増殖亢進に関与することを見出している。さらに、T-UCRの超保存領域が大腸がんにおいて高度にm6Aのメチル化されていることを発見した。そこで本研究では、がん細胞で変化しうる「RNAメチル化スイッチ」を介したT-UCRの発現調節メカニズムの解明を目的とした。 ヒト大腸がん組織検体において正常大腸上皮と比較し、発現変動するRNAメチル化調節因子のスクリーニングを行ったところ、メチル化酵素METTL3とRNAメチル化認識タンパク質YTHDC1がmRNA及びタンパク質レベルで有意に発現が増加していた。RNA-タンパク質免疫沈降により、YTHDC1はT-UCRと核内で結合することを見出した。さらに、大腸がん細胞においてYTHDC1をノックダウンすると、SRSR遺伝子群から生成されるT-UCRのスプライシングパターンを変化させ、ストップコドンをもつUCRエクソンのインクルージョンが減少した。 以上の結果より、超保存領域のRNAメチル化とその結合たんぱく質YTHDC1は、超保存領域のスプライシング調節を介して、大腸がんにおける機能性RNA:T-UCRの発現を亢進させ、大腸がん悪性化に寄与する可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は、大腸がん臨床検体を用いて、RNA m6Aメチル化調節因子の発現スクリーニングを行った。なかでも、RNAメチル化酵素Mettl3及びMettl14、RNA m6Aメチル化の認識タンパク質であるYTHDC1の発現は大腸がん組織において正常組織に比べ有意に発現亢進していた。また、抗YTHDC1抗体を用いたRNA-protein IPにより、YTHDC1は大腸がん細胞の核内で、T-UCRの超保存領域に特異的に結合することを見出した。さらに、YTHDC1をノックダウンした大腸がん細胞株においては、SRSF遺伝子群から生成されるT-UCRのスプライシングパターンを変化させたことから、T-UCRのm6Aメチル化-YTHDC1はT-UCRのRNAプロセシングを介し発現調節に関与する可能性が見出された。以上のことより、現在までに研究目的である、大腸がん細胞に蓄積するT-UCRのメチル化の解析、及び大腸がんにおけるRNAメチル化の制御因子の同定とそのメカニズムについての知見を得ることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでに、研究目的のうち、大腸がん細胞の核に蓄積するT-UCRのメチル化の解析、および大腸がんで発現量が変化するm6A RNAメチル化の制御因子の同定を行った。 令和2年度は、令和元年度に行った大腸がん細胞のT-UCRのRNAメチル化制御因子のスクリーニングによって明らかにした、RNAメチル化酵素Mettl3及びメチル化RNA結合タンパク質YTHDC1に焦点をあて、CRISPR/Cas9のノックアウト細胞を樹立し、大腸がん悪性化への関与を確認する。さらに、細胞周期のG2/M期にかけてMettl3及びYTHDC1の発現が亢進することを見出したため、大腸がん細胞の細胞分裂におけるT-UCRのメチル化ダイナミクスをRCas9システムを用いリアルタイムに解析する準備を推進している。
|
Research Products
(5 results)