2019 Fiscal Year Research-status Report
肝前駆細胞と肝間葉系細胞との相互作用機構の解明と抗線維化療法標的分子の探索
Project/Area Number |
18K07964
|
Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
東 正新 (陳正新) 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 寄附講座准教授 (10376783)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柿沼 晴 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 寄附講座准教授 (30372444)
朝比奈 靖浩 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 寄附講座教授 (00422692)
渡辺 守 東京医科歯科大学, 高等研究院, 特別栄誉教授 (10175127)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 細胞間相互作用 / 肝星細胞 / 胆管細胞 / ヒトiPS細胞 / 肝幹/前駆細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者らは、1. 細胞表面抗原によって高度に濃縮したマウス肝幹・前駆細胞とマウス肝間葉系細胞(星細胞)との新規共培養系を樹立することにより、肝間葉系細胞が肝幹・前駆細胞の分化・増殖に及ぼす効果と、その際に中心的な機能を有する標的分子を同定すること、2. 肝前駆細胞誘導動物モデルを用いて、肝間葉系細胞と肝幹・前駆細胞との相互作用、ならびに肝星細胞の活性化・増殖を調節しうる分子機構を探索、解析すること、3. 得られた標的分子の機能について、ヒトiPS細胞培養系を用いて肝前駆細胞と肝間葉系細胞の分化・増殖を調節しうる標的分子の機能を検証すること、の3点を目的とした研究を行い、今年度の成果として下記を得た。 マウス肝幹・前駆細胞とマウス肝間葉系細胞との新規共培養系を樹立し、マウス肝間葉系細胞由来の液性因子としてVasoactive intestinal peptide(VIP)がマウス肝幹・前駆細胞による胆管構造の構築に促進的に機能することを明らかにした。さらに、この機能がMMP14の機能欠損によって低下すること、胆管形成期の胎仔肝臓では、肝間葉系細胞でのVIP、胆管原器でのVIP受容体の発現増加が確認され、VIP antagonist投与によって肝内胆管のtight junction形成が有意に低下することが示された(Hepatol Commun, 2020)。さらに現在この知見に基づき、胆汁うっ滞型肝障害におけるVIPシグナルの機能的意義を解明すべく研究を進行中である。 同様にヒト細胞での機能解析として、ヒトiPS細胞由来肝前駆細胞とヒトiPS細胞由来肝星細胞の共培養系を構築し、解析を進めている。その結果、前記のVIPはヒトiPS細胞由来肝前駆細胞からの胆管形成にも促進的に機能することが示された(第26回肝細胞研究会で発表)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1の「マウス肝幹・前駆細胞と肝間葉系細胞(星細胞)との新規共培養系を樹立することにより、肝間葉系細胞が肝幹・前駆細胞の分化・増殖に及ぼす効果と、その際に中心的な機能を有する標的分子を同定する」研究に関しては、非常に順調に進行している。肝幹・前駆細胞より、胆管系譜細胞からなる嚢胞型培養体<cholangiocytic cysts>を形成させる培養系において、肝間葉系細胞と共培養すると、CK19とGrhl2発現を高めて胆管分化とtight junction形成を支持しつつ、AQP1など胆管上皮に発現するチャネル分子の発現を亢進せしめることを見いだした。Matrix Metalloproteinase (MMP)-14欠損マウス由来の肝間葉系細胞と共培養すると、野生型よりも有意に効果が少なく、増大効果はほぼ消失することを確認した。この形質の差異は肝間葉系細胞が産生するVIPの欠如によるものであることを同定し、神経伝達物質であるVIPの新規機能を解明することに成功した。本研究結果は米国肝臓病学会の機関誌Hepatology Communicationsに採択されるなど、高い評価を受けている。 2の「肝前駆細胞誘導動物モデルを用いて、肝間葉系細胞と肝幹・前駆細胞との相互作用、ならびに肝星細胞の活性化・増殖を調節しうる分子機構を探索、解析する」についても1で得られたVIPの機能に関してin vivoでの検証を進めている。 3の「ヒトiPS細胞培養系を用いた検証」に関してもヒトiPS細胞から肝星細胞を誘導し、共培養が可能な培養系を新規に構築しえたことにより、前記のマウスで得た結果を、ヒトiPS細胞培養系でも再現ができるかを検証中である。 以上のように、評価の高い学術誌への論文発表を含め、研究は順調に進行していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
いずれの項目に関しても、今年度の成果に基づいて、次年度もさらに研究を進捗させてゆく予定である。 1については、VIPが胆管細胞でのtight junctionの形成、再構築を促進する機能が明らかにされたので、今後は、VIPの上流及び下流シグナルに有望な候補分子がないか、網羅的な探索を進めていく予定である。探索を通じて有望な分子に標的を絞り、その分子生物学的な機能解析を進めて行く予定である。 2については、DDC投与モデルを用いた肝前駆細胞誘導を行い、in vivoでのVIPの効果を検証している。これまでの研究で、胆汁うっ滞性肝障害からの回復期にVIPを投与することで、その回復が促進されること、胆管形成期にVIPシグナルを阻害すると胆管におけるtight junctionの形成が遅延することが判明しているが、胆汁うっ滞性肝障害そのものを軽減する効果があるのか、に関しても今後検討を進める予定である。 3については、ヒトiPS細胞由来肝前駆細胞とヒトiPS細胞由来肝間葉系細胞とを、1で開発した非接触共培養系を利用し、同定した標的分子の過剰発現・阻害もしくは欠損株樹立を行い、マウスで同定された機構がヒト間葉系細胞においても同じ機能を呈しうるかを検証する。さらに、得られた知見が、胆汁うっ滞性肝疾患での肝生検組織・患者血清でも同じ動態を呈するのか、検証する予定である。 これらの研究の進展により、将来的に自己由来ヒトiPS由来細胞を用いた肝幹・前駆細胞及び成熟肝細胞へのより安定した成熟化誘導法の開発にむけた基盤技術となることを企図している。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由: 試薬等が計画当初より廉価で購入可能であったため、廉価な物品を選択して購入したため。 使用計画:検討する数・種類を拡大して解析を発展させて行うため、当初の計画よりも試薬を増量して購入する予定である。
|
Research Products
(11 results)
-
-
[Journal Article] Time course alterations of virus sequences and immunoglobulin titers in a chronic hepatitis E patient2020
Author(s)
Nitta S, Takahashi K, Kawai-Kitahata F, Tsuchiya J, Sato A, Miyoshi M, Murakawa M, Itsui Y, Nakagawa M, Azuma S, Kakinuma S, Watanabe M, Asahina Y.
-
Journal Title
Hepatology Research
Volume: 50
Pages: 524~531
DOI
Peer Reviewed
-
[Journal Article] Vasoactive Intestinal Peptide Derived From Liver Mesenchymal Cells Mediates Tight Junction Assembly in Mouse Intrahepatic Bile Ducts2020
Author(s)
Sato A, Kakinuma S, Miyoshi M, Kamiya A, Tsunoda T, Kaneko S, Tsuchiya J, Shimizu T, Takeichi E, Nitta S, Kawai-Kitahata F, Murakawa M, Itsui Y, Nakagawa M, Azuma S, Koshikawa N, Seiki S, Nakauchi H, Asahina Y, Watanabe M.
-
Journal Title
Hepatology Communications
Volume: 4
Pages: 235~254
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
-
[Journal Article] Loss of fibrocystin promotes interleukin-8-dependent proliferation and CTGF production of biliary epithelium2019
Author(s)
Tsunoda T, Kakinuma S, Miyoshi M, Kamiya A, Kaneko S, Sato A, Tsuchiya J, Nitta S, Kawai-Kitahata F, Murakawa M, Itsui Y, Nakagawa M, Azuma S, Sogo T, Komatsu H, Mukouchi R, Inui A, Fujisawa T, Nakauchi H, Asahina Y, Watanabe M.
-
Journal Title
Journal of Hepatology
Volume: 71
Pages: 143~152
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
-
[Journal Article] Comprehensive genetic analysis of cholangiolocellular carcinoma with a coexistent hepatocellular carcinoma‐like area and metachronous hepatocellular carcinoma2019
Author(s)
Kawai-Kitahata F, Asahina Y, Kaneko S, Tsuchiya J, Sato A, Miyoshi M, Tsunoda T, Inoue-Shinomiya E, Murakawa M, Nitta S, Itsui Y, Nakagawa M, Azuma S, Kakinuma S, Tanabe M, Sugawara E, Takemoto A, Ojima H, Sakamoto M, Muraoka M, Takano S, Maekawa S, Enomoto N and Watanabe M.
-
Journal Title
Hepatology Research
Volume: 49
Pages: 1466~1474
DOI
Peer Reviewed
-
-
[Presentation] The association of serum IFN-λ3 levels with liver fibrosis and hepatocarcinogenesis in chronic hepatitis C patients treated with direct-acting antiviral agents.2019
Author(s)
Murakawa M, Inoue-Shinomiya E, Asahina Y, Nakagawa M, Tsuchiya J, Sato A, Miyoshi M, Tsunoda T, Kawai-Kitahata F, Nitta S, Itsui Y, Kakinuma S, Azuma S, Watanabe M.
Organizer
The 54th annual meeting of the European association for the study of the liver
Int'l Joint Research
-
-
-
-