2019 Fiscal Year Research-status Report
脂肪性肝疾患での小胞体ストレス、Mallory-Denk体とオートファジーの意義
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18K07988
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
原田 大 産業医科大学, 医学部, 教授 (00241175)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 非アルコール性脂肪性肝疾患 / 銅 / ウイルソン病 / C型肝炎 / 小胞体ストレス / オートファジー / Mallory-Denk体 |
Outline of Annual Research Achievements |
肝由来の培養細胞を用いて肝細胞への脂肪沈着をきたす状態を観察した。遊離脂肪酸負荷では飽和脂肪酸であるパルミチン酸にて酸化ストレスと小胞体ストレスが引き起こされた。それに伴いオートファジーに異常が生じた。この時オートファゴゾームの形成、ライソゾームの酸性化とライソゾーム酵素であるカテプシン活性には異常はなかった。しかし、オートファゴゾームとライソゾームの癒合の段階に障害が存在した。これに少量のプロテアソーム阻害剤を投与するとユビキチンとp62を含むMallory-Denk体に類似した細胞内封入体が形成され、さらに濃度を上昇させるとアポトーシスを生じた。この異常には特に小胞体内のカルシウム濃度の異常が重要であった。これらの障害はオレイン酸やエイコサペンタエン酸にて回避された。また亜鉛がパルミチン酸による小胞体ストレス、オートファジーの障害、封入体形成ならびに細胞障害を改善した。 ウイルソン病においては脂肪肝を伴うことが知られている。銅負荷においても小胞体ストレスが起こり、オートファジーの障害を生じた。この障害もオートファゴゾームの形成等に異常はなく、オートファゴゾームとライソゾームの癒合の段階が障害されていた。また、銅もMallory-Denk体類似の細胞内封入体を形成した。また銅は細胞にアポトーシスを誘導した。これらのオートファジーの異常、封入体形成ならびに細胞死は亜鉛の投与により改善した。 肝臓の脂肪化を来す疾患としてC型肝炎ウイルス(HCV)感染症が知られている。現在C型肝炎治療は大変進歩したが、ウイルス排除後も発癌がある。JFH-1感染細胞を用いてHCV感染の状態を検討した。HCV感染によりオートファジーの障害、酸化ストレス、小胞体ストレスならびにDNA損傷が起こるが、HCVの感染自体では細胞死は起こらず、細胞増殖にも障害はなかった。このことが発癌に関係している可能性があった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の最大の目的は脂肪代謝異常からの細胞障害と発癌への詳細な機序の解明とその対策である。そのために遊離脂肪酸負荷、銅負荷、HCV感染のモデルを使用した。これらに共通して見られた現象が、酸化ストレス、小胞体ストレス、ケラチンとユビキチンならびにp62からなる封入体形成ならびにアポトーシスであった。オートファジーは腫瘍の抑制にも働くが、癌細胞の増殖にも関与している可能性があり複雑である。またp62の蓄積がこれらの刺激により見つかった。P62の蓄積は抗酸化反応であるKeap1-Nrf2の経路にも関与しており、癌細胞の増殖にも関与していると考えられており重要な所見と考える。また今回、亜鉛の作用でユニークな結果が得られた。遊離脂肪酸と銅負荷に対しては明らかに改善傾向がみられたが、HCV感染に対しては必ずしも有用ではなく複雑な反応を示した。このことは亜鉛の臨床への使用に関して注意を要する重要な所見と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
脂肪酸負荷、銅負荷とHCVの全てにおいて酸化ストレス、小胞体ストレス、オートファジーの途中段階での異常、Mallory-Denk体類似の封入体形成、p62の発現亢進、細胞障害が見られた。HCV感染においてはDNA障害が観察された。発癌の研究にはDNA障害が重要と考えられるため、遊離脂肪酸負荷にもさらに鉄、タプシガルジン、ピュロマイシンなどを併用して適切なモデルを現在検討中である。さらに2型糖尿病に伴う脂肪性肝疾患が今後の肝疾患の診療に重要と考えられる。実際の患者ではインスリン抵抗性が重要であるが、過剰の糖自体の影響も重要と考えられるため、過剰の糖負荷の培養細胞への影響も検討中である。 さらにp62と抗酸化反応であるNrf2の過剰発現は炎症に対する抗酸化作用で有益な場合もあるが、DNAに異常の入っているような細胞の増殖保護に働く可能性もある。これらに注意して様々なストレスに対する酸化ストレスの軽減、小胞体ストレスの軽減やオートファジーの調節などが如何に働くかを検討する。
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Causes of Carryover |
2019年は以前に購入した培養試薬、培養器具、遺伝子導入試薬や抗体等を使用して研究をしたので次年度使用が生じた。 2020年には新たに培養試薬、培養器具、抗体、遺伝子導入試薬や様々なオートファジー、酸化ストレスならびに小胞体ストレスに影響する試薬を購入する必要があるので未使用額を使用する予定である。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] Idiopathic copper toxicosis: is abnormal copper metabolism a primary cause of this disease?2020
Author(s)
Harada M, Honma Y, Yoshizumi T, Kumamoto K, Oe S, Harada N, Tanimoto A, Yabuki K, Karasuyama T, Yoneda A, Shibata M.
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Journal Title
Med Mol Morphol.
Volume: 53
Pages: 50-55
DOI
Peer Reviewed
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