2018 Fiscal Year Research-status Report
DNA脱メチル化剤治療効果判定の高感度リキッドバイオプシーの開発
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18K07989
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
竹島 秀幸 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 研究員 (40432497)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | エピジェネティクス / リキッドバイオプシー / エピジェネティック治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性炎症に関連するがんでは、DNA高メチル化によるがん抑制遺伝子の不活化が、発がん原因となる。DNAメチル化異常を標的とした脱メチル化剤治療は、これらの固形がんに対して有効であることが報告されている。しかしながら、脱メチル化剤はMTDではなく最大生物学的効果用量で用いることで高い治療効果が得られるため、その臨床導入には、がん組織における脱メチル化の高感度なリキッドバイオプシーの確立が不可欠である。 そこで本研究では、『がん細胞内でメチル化されているゲノム領域(即ち、ヌクレオソームを形成している領域)は、血中遊離DNAとして安定に存在する』ことに着目して、脱メチル化をモニターする新規リキッドバイオプシーを開発する。 1年目の本年度は、がん細胞株からの疑似的血中遊離DNA調製方法の確立を行った。脱メチル化剤(デシタビン)で処理した胃がん細胞株(44As3、GC2)、及び、大腸がん細胞株(RKO)から抽出した細胞核を、マイクロコッカルヌクレアーゼ処理し、ヌクレオソームを単離した(疑似的な血中遊離DNA)。得られたDNAの長さを解析した結果、ヌクレオソーム単位の長さの遊離DNA断片が得られることを確認した。次に、脱メチル化モニターのマーカー遺伝子を単離するために、脱メチル化剤処理前後の胃がん細胞株44As3におけるメチル化状態、及び、遺伝子発現状態をゲノム網羅的に解析した。その結果、処理前は高度にメチル化されており、脱メチル化剤処理によりメチル化レベルが40%以上低下した遺伝子を959個同定した。また、それらの遺伝子のうち46個の遺伝子で発現回復が認められることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度の計画のうち、がん細胞株からの疑似的血中遊離DNA調製方法の確立を達成した。また、脱メチル化モニターのマーカー遺伝子の候補を複数同定することができた。したがって、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度に開発したモニター方法により、実際にがん患者のがん組織におけるDNAメチル化状態をモニターできるかどうかを解明する(収集した症例のうち血中遊離DNAが多く得られた症例を用いる)。具体的には、脱メチル化モニターのマーカー遺伝子が、がん組織においてメチル化されている患者、及び、されていない患者それぞれ30症例程度について、血中遊離DNAを調製する。定量的PCRを行うことで、1)がん組織においてマーカー遺伝子がメチル化されている患者では、血中遊離DNAにおいてマーカー遺伝子が検出されること、2)メチル化されていない患者では、血中遊離DNAにおいてマーカー遺伝子が検出されないことを解明する。その際に、血中遊離DNA中のがん関連遺伝子の突然変異頻度を測定することで、がん細胞由来の血中遊離DNAの割合を算出、解析結果の補正に用いる。
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