2018 Fiscal Year Research-status Report
心筋梗塞後リモデリングにおけるDNA損傷応答-炎症連関の探索
Project/Area Number |
18K08038
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
石田 万里 広島大学, 医歯薬保健学研究科(医), 准教授 (30359898)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石田 隆史 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (40346482)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | DNA損傷 / 心筋梗塞 / 炎症 / 心不全 |
Outline of Annual Research Achievements |
心筋梗塞後の治癒反応,瘢痕形成,リモデリングは急性期のみならず慢性期の予後に重大な影響を及ぼす。炎症反応はこれらの過程において重要な役割を果たしているが,心筋梗塞後の炎症反応の分子メカニズムには未だ不明な点が多い。近年DNA損傷およびそれに対する細胞の応答が注目を集めており,炎症との関連の報告も多い。本研究の目的は,心筋梗塞後のリモデリングにおけるDNA損傷・損傷応答の役割を炎症細胞動態に焦点をあてて検討することである。 DNA損傷応答に異常を示すモデルとして,DNA二本鎖切断の修復に関わるKu80のノックアウトマウス(Ku80-KO)および野生型マウスを使用している。その左前下行枝を結紮して心筋梗塞を作成する手技を習得し,一定した領域の梗塞巣を作成することができるようになり実験を行っている。心筋梗塞後の生命予後を比較すると,Ku80-KOは梗塞後早期から生存率が低下しており野生型マウスに比べ予後が悪いことが明らかとなった。死因は心破裂,心不全が多く原因不明の個体もあった。心筋梗塞1週間後のDNA二本鎖切断量をリン酸化ヒストンH2AX抗体を用いて検討すると,梗塞部,周辺部,非梗塞部ともKu80-KOで増加していた。梗塞部の炎症性サイトカイン;IL-1β,IL-6, MCP-1の発現を検討したところ,梗塞後24時間まで,Ku80-KOで発現が低下していた。この結果から,心筋梗塞後の炎症反応にDNA損傷応答が強く関与している可能性,そしてそれが心筋梗塞後の心機能,瘢痕形成,リモデリングに変化をおよぼす可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
心筋梗塞作成の手技の確立,生命予後の検討,DNA損傷に関する検討,炎症性サイトカイン発現の検討等,今後の研究に必要な基礎となる所見を得たため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,Ku80-KOと野生型とで梗塞後の心機能に変化があるか,梗塞後心筋における好中球,マクロファージの動態(好中球(Ly6C抗体),マクロファージ(Mac3抗体)を比較検討する。また,M1マクロファージ(iNOS抗体),M2マクロファージ(Mannose receptor抗体))についても検討する。さらに心筋組織中に存在する免疫細胞のFACSによる解析,心筋梗塞後心筋における線維化の程度およびサイトカイン発現の時間的,量的検討を行う。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由として,研究室ですでに保有している抗体を用いているためその分の購入額が少なかったこと,学会発表をするには研究成果がまだ十分でないためその旅費としての支出が少なかったことなどが考えられる。今後,抗体の補充購入や学会発表を行い使用する。
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