MRスペクトロスコピーによる心臓周囲脂肪の質的評価法の開発

2019 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 18K08040
• Research Institution: The University of Tokushima
• Principal Investigator: 八木 秀介 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 特任准教授 (00507650)
• Project Period (FY): 2018-04-01 – 2021-03-31
• Keywords: 心臓周囲脂肪

Outline of Annual Research Achievements

異所性脂肪としての血管周囲脂肪が動脈硬化病変形成に関与する。動脈硬化病変における炎症細胞浸潤はこれまで血管内側から起こると考えられてきたが、我々の研究からは炎症細胞浸潤は、血管外膜側からも起こりプラークの性状決定に関与している。特に冠動脈周囲脂肪である心臓周囲脂肪は心筋表層を走行する冠動脈を障壁なく取り囲んでおり、炎症性サイトカインなどを分泌しパラクラインやvasa vasorumという血管外の微小栄養血管を介した経路で炎症を冠動脈に波及させ、冠動脈疾患発症に関与している。この心臓周囲脂肪の質を評価する方法として、MRスペクトロスコピーを用いて検討を行った。
今年度、MRスペクトロスコピーによる心臓周囲脂肪の脂肪濃度を評価する至適撮影部位として、左冠動脈前下行枝が走行している心尖部の脂肪に焦点を絞って撮影する方法が最も鋭敏な方法であることを明らかにした。またこの心尖部の心臓周囲脂肪が最も鋭敏に心臓の機能を反映することを明らかにした（Circ J. 2020 24;84(2):203-216.）　次に、未固定遺体を用いて、この左室前下行枝周囲の心臓周囲脂肪の炎症が左冠動脈前下行枝の冠動脈のlipid richなプラークの形成に関与していることを明らかにした（Circ J 202 in press）.
今後心臓周囲脂肪のCTにて測定した体積とMRスペクトロスコピーにて評価した脂肪濃度が冠動脈病変の重症度にどのような影響を与えるか臨床試験にて検証する予定である。すなわち冠動脈造影による冠動脈疾患の重症度を感度・特異度よく評価できる因子を内臓脂肪量・皮下脂肪量・骨格筋量・心臓周囲脂肪量・心臓周囲脂肪含有率をパラメータとして多変量解析にて検証する。

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

MRスペクトロスコピーによる脂肪濃度評価方法は確立し、おおむね順調に進展していると思われる。また冠動脈バイパス術を行う患者の心臓周囲脂肪の脂肪含有量と、MRスペクトロスコピーにて評価した脂肪含有量の相関を検討する臨床試験の準備を進めており、順調に進展していると思われる。

Strategy for Future Research Activity

臨床試験において心臓周囲脂肪の量とMRスペクトロスコピーにて評価した脂肪濃度が冠動脈病変の重症度における影響について評価する予定である。また冠動脈バイパス術を行う患者の心臓周囲脂肪の脂肪含有量と、MRスペクトロスコピーにて評価した脂肪含有量の相関を検討する。さらに、今後前向き試験にて、心臓周囲脂肪の量とMRスペクトロスコピーにて評価した脂肪濃度が心血管イベント発症・予後規定因子になるかどうかを評価する臨床試験を準備している。