2018 Fiscal Year Research-status Report
金ナノ粒子による局所温熱効果を利用した末梢動脈疾患治療の効果検証
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18K08041
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
得能 智武 九州大学, 大学病院, 助教 (50567378)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
樋口 義洋 九州大学, 大学病院, 講師 (40404032)
堀内 孝彦 九州大学, 大学病院, 教授 (90219212)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 金ナノロッド / 炎症 / 下肢虚血 / 温熱療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
金ナノロッドに近赤外線光を照射すると、フォトサーマル効果により金ナノロッドが熱を帯びることが知られている。我々はこの効果を利用して、局所の温熱療法が出来るシステムを構築しようとしている。またさらに金ナノロッドをドラッグデリバリーの手段の一つとしても活用できるように検討中である。 静脈注射した金ナノロッドがどの程度炎症部位に集積するかをまず検証した。炎症のモデルとしては心不全マウスを用い、尾静脈から金ナノロッドを注入して、体内での分布を調べた。その結果、肝臓や脾臓など網内系に多く集積するが、炎症モデルマウスでは、コントロールマウスと比べて、心筋組織の炎症部位に金ナノロッドが3倍以上、有意に集積することが分かった。このことは、2019年3月に日本循環器学会学術集会で報告し、論文発表を行った(Accumulation of gold nano-rods in the failing heart of transgenic mice with the cardiac-specific expression of TNF-α. Heart and Vessels. 34:538-544, 2019)。この結果から、金ナノロッドを使用した炎症部位への温熱療法とドラッグデリバリーの可能性が示唆された。 下肢虚血モデルでも同様のことを確認しようとしている。このモデルの場合は、血流が途絶していることから、静脈注射では、金ナノロッドを病変部位まで送達できない可能性があり、虚血部位の組織に直接投与する方法で検討中である。近赤外線と金ナノロッドを組み合わせた温熱治療の条件設定を行っている最中だが、局所的な温熱療法によって、虚血部位の血管新生促進を目標としている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
下肢虚血モデル作成に時間を要している。金ナノロッドを虚血部位に注入し、近赤外線を当てることで、注入部位局所での温熱治療を目指しているが、その条件決めに時間を要している。通常の温熱治療に比べて血管新生を誘導する近赤外線の当て方、金ナノロッドを注入する量や、場所などを検討している。また現在は作成したモデルの効果をサーモグラフィーを使って評価しているが、これは体温を測ることが出来るものである。しかし、レーザードップラーを使用したほうがより正確に血流の過多を評価できることが知られている。今回の研究費にて購入できるレーザードップラーを検討している。 以上のようにやや遅れている点もあるが、マウスに静脈注射した金ナノロッドは炎症部位に集積することが確認でき、その結果を学会報告と論文として発表することができた。静脈注射で金ナノロッドを使用することで、炎症部位にドラッグをデリバーすることもできることが証明でき、このことは一定の進捗があったと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在は、金ナノロッドと近赤外線による温熱療法の組み合わせで、局所の血管新生療法を検討中である。条件決めを行い、その後は血管新生を促すようなドラッグを金ナノロッドに結合させ、静脈注射もしくは局所注射にて金ナノロッドだけでなく、ドラッグも送達させたいと考えている。血流の測定を当施設にあるサーモグラフィーで行っているが、レーザードップラーを使用することで、正確な血流測定が出来ると考えている。レーザードップラーは、当施設では所持しておらず、金額的に可能な範囲での購入もしくは、他施設のものを一時的に使用させてもらうことなどを検討している。 また金ナノロッドを使用したマウスの下肢を回収し、免疫染色ではCD31抗体を用いて内皮細胞の増加を病理標本からも評価する。さらに摘出した検体から蛋白やmRNAを回収し、発現している蛋白やmRNAを解析して生化学的にもサポートできるデータを集める。
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Causes of Carryover |
マウスの下肢虚血モデルを作成し、血管新生の進行具合をサーモグラフィーで評価している。血流の評価は特に今回の実験で重きを置くところであるが、レーザードップラーの方が、血流を正確に測定でき、これまでの論文報告でも一般的である。しかし、当施設ではレーザードップラーを所持していない。そのため、今回の研究費の範囲で購入可能なレーザードップラーを探したが、高額であるため、次年度の費用と合算して改めて購入を検討したいと考えている。
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Research Products
(3 results)