2018 Fiscal Year Research-status Report
Role of oxidised HDL in the pathogenesis of coronary artery atherosclerosis
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18K08049
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
岩田 洋 順天堂大学, 医学部, 准教授 (00451807)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 動脈硬化 / HDL機能 / 予後 / バイオマーカー / プロテオミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
スタチン投与後の残余リスクの治療標的として、LDLと同様のリポタンパクであるHDLは、LDLとは逆に、「善玉コレステロール」と呼ばれている。血清中のHDLコレステロール(HDL-C)低値は、一次予防症例で冠動脈疾患発症のリスク因子であることが、わが国でも示されており、スタチン内服でLDL-Cが抑制されていてもHDL-C低値は心血管イベントのリスクを上昇させることが示されている。血清中のHDLのコレステロール引き抜き能(Cholesterol efflux capacity)の予後への影響を検討した臨床研究では、コレステロール引き抜き能が高いほど、心血管イベント発症率が低いことが示されており、動脈硬化性疾患の予後を改善するためには、コレステロール引き抜き能を改善させる治療が必要である。本研究では、最終的にHDLの機能を改善させ、予後改善につながる治療法を見出すこと、あるいはHDL機能を簡便にモニタリングして動脈硬化性疾患の予後や病勢を示すバイオマーカ-として使用できることを目標としている。HDL機能、ひいては動脈硬化性疾患の予後に関わる重要な因子としてHDLの酸化に注目し、その影響をcase control studyによって明らかにする。現在、研究計画に基づき症例の抽出を終了し、proteomicsの条件検討を開始している。また、症例の血清からのHDLの単離と、コレステロール引き抜き能測定系を確立し、測定を開始しており、概ね順調に経過している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究において、われわれは(1)順天堂PCIデータベースの臨床データと(2)冷凍保存血清を用い、保存血清から単離したHDLのApoA1-Trp72の酸化をtargeted proteomics (oxidized proteomics)というきわめて特異性の高い方法で検出・定量化して、まずはHDL機能に対する影響、そして PCIを施行された二次予防症例におけるOx ApoA1-Trp72の、PCI後の心血管イベント(心血管死亡・心筋梗塞・脳卒中)に対する影響をnested case-control研究にて明らかにするための検討を行なっている。当初の研究計画では、平成30年度に、順天堂PCIデータベースから心血管イベントをPCI後10年間で発症した100症例を無作為に抽出し、それに年齢・性別・糖尿病・脂質低下薬をpropensity score matchingにて一致させた、少なくとも10年間イベントのなかった症例を1:1で抽出する予定となっていたが、実際に平成30年度にはデータベースからの抽出を行い、イベントあり・なし群それぞれ90症例の抽出を終了している。また、同時にHDL機能、すなわちHDLによるコレステロール引き抜き能の測定系を確立し、現在はOx ApoA1-Trp72を検出するためのtargeted proteomicsの条件検討を開始している。研究計画に対し、現時点では概ね順調に経過している。
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Strategy for Future Research Activity |
proteomicsにてOx ApoA1-Trp72の有無と定量化する。さらに、THP-1細胞、J774細胞と放射性同位体標識したコレステロールを使いHDLのコレステロール引き抜き能を定量化する。続いて、イベントあり・なし2群間でOx ApoA1-Trp72、コレステロール引き抜き能に差があるか、をまず検討する。続いて症例ごとのOx ApoA1-Trp72とコレステロール引き抜き能の相関を検討、さらにはOx ApoA1-Trp72に影響を及ぼしうる臨床パラメータは何か、例えば喫煙 、肥満、糖尿病の重症度、冠動脈病変の重症度、さらには様々な薬剤などの影響を検討、in vitroで、Ox ApoA1-Trp72に影響する薬剤のスクリーニングなどを行い、HDLの機能改善を標的とした治療あるいは病勢判定や予後予測に有用なバイオマーカーの発見に関する検討を行いたい。
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Causes of Carryover |
2018年度に関しては本研究に関する学会発表がなく、そのための旅費が発生しなかったが、次年度以降に積極的に学会発表を行う予定としているため、2019年度以降にそのためのリソースが 必要であると想定している。さらに、HDL単離のためのカラムを、条件検討含め3本購入したが、2019年度以降、その数を増やしてより多くの検体を同時に測定できるようにする予定である。さらにはHDL機能の測定系を確立する際の消耗品購入以外に、HDL酸化を検討するためのプロテオミクスに関しての条件検討を開始したばかりであり、2019年度以降により多くのリソースが必要と想定している。
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