2018 Fiscal Year Research-status Report
造血幹細胞と心臓マクロファージの加齢的変化に伴う高齢者心不全の病態解明
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18K08061
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中山 幸輝 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (70721885)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤生 克仁 東京大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (30422306)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 心不全 / マクロファージ / エピゲノム / 造血幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
老化は心不全の大きなリスクファクターであり、高齢化社会において心臓の老化は解明すべき重要な課題である。若年の時には恒常性を維持することが出来る外的ストレスに対しての可塑性が加齢により失われる。我々はこれまで、心臓の間質に存在するマクロファージが分泌蛋白を介して心保護的に作用することを報告してきた。そこで、心臓マクロファージが老化すると様々な外的シグナルに対して可塑性を失い、炎症型の表現型になることが心臓老化の病態生理において重要と考えた。心臓マクロファージの細胞起源は、出生時は胎児肝単球由来であるが、加齢や心不全になると骨髄造血幹細胞由来となる。加齢により骨髄が老化すると、心臓マクロファージの表現系がどのように変化するかを解析し、心臓組織の微小環境に与える影響と心機能の表現型を評価した。 老化マウスの骨髄移植後の心臓マクロファージを解析すると、炎症型マクロファージの割合が多く、慢性期に心臓線維化を引き起こして心収縮力が低下した。細胞分化には、微小環境と細胞相互作用が関与する。細胞起源の変遷や骨髄老化の内因的因子(エビゲノムの変化)が分化に与える影響を解析するために若年マウスと老化マウスの造血幹細胞を同じ個体に移植した後の細胞動態を評価した。すると、骨髄老化が心臓マクロファージの分化、表現型に与える影響がわかった。この分子機序の解明が心臓の老化を抑制する新たな治療標的になると考えられた。 さらには、心不全マウスでも同様の解析を行い、心不全において起きる骨髄の造血幹細胞レベルでの変化を解析し、心不全の新たな治療戦略を作成することも目的とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
骨髄が老化すると心臓マクロファージの表現型が炎症型に変化することが分かり、その網羅的発現解析を行なっている。これにより骨髄老化が心臓マクロファージの保護的作用をどのように変容させるかを評価することが出来た。若年マウスと老化マウスの造血幹細胞移植によって、老化した骨髄由来の細胞は骨髄系細胞に分化しやすくなることが分かり、これは骨髄環境の変化ではなく、造血幹細胞の内因的要素による影響を受けていることが分かった。老化が造血幹細胞のエピゲノムに与える変化によると考え、骨髄単球前駆細胞や末梢血単球のエピゲノムを比較解析した。また、心臓マクロファージへの分化様式も異なることがわかり、その分子機構の解明を図った。臓器マクロファージの分化においては細胞特異的な転写因子の制御が重要であることが分かっている。そこで、心臓マクロファージ特異的に発現する転写因子に注目することとした。それぞれの転写因子に対してCRISPR/Cas9システムを用いてノックアウトするレンチウイルスを作成し、造血幹細胞に感染させた後、放射線照射マウスに注入した。心臓マクロファージ特異的な転写制御機構に関わる転写因子をノックアウトした造血幹細胞は心臓マクロファージに分化できないと考えた。心臓マクロファージを後に単離して組み込まれたレンチウイルスの配列をシーケンスすることでマスター転写因子の同定を行い、もっとも表現型に影響を与えた転写因子に注目した。
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Strategy for Future Research Activity |
心臓マクロファージのマスター転写因子を同定し、アンフィレグリンを始めとする心臓マクロファージ特異的発現を示す心保護的蛋白の制御機構を解明する。これにより心不全の病態生理に迫り、新規治療の開発に繋げる。遺伝子介入による心臓マクロファージの質的な変化により心筋実質がどのように変化するかを評価することは新しい病態生理の解明にもつながる。
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Causes of Carryover |
今後は次世代シーケンサーを使用した発現解析やゲノムシーケンスを行う必要があり、多額の費用が予想された。これまでの予備検討で得られたデータをもとにして動物実験も本格化するため実験動物の飼育維持や介入にも費用を要す。また、得られたデータをもとに今後さらなる学会発表や海外での発表、議論も予定しており旅費も含めた予算が必要と考えられた。
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