2019 Fiscal Year Research-status Report
網羅的手法を用いたHDL機能を規定する因子の基礎臨床融合研究
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18K08072
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
石田 達郎 神戸大学, 医学研究科, 特命教授 (00379413)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
入野 康宏 神戸大学, 医学研究科, 医学研究員 (10415565)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 高比重リポタンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢化に伴って増加する心血管疾患に対する治療戦略として、血清脂質の量的管理のみならず質的管理の重要性が認識されるようになった。 とくに、HDL(high-density lipoproteins:高比重リポタンパク質)の抗動脈硬化機能などの多様な機能を有しており、心血管疾患の新たな治療標的として注目を集めている。炎症を基盤とする病態ではHDL構成脂質組成が変化したり化学的修飾を受けたりすることにより、HDL機能が低下している。そこで、本年度は、低下したHDL機能がHDLの取り込み能と関連があるかを調べるために、HDLの取り込みの分子機序を明らかにすることを目的とした。 まず、HDLの取り込み能を定量的に評価できる実験系を構築した。蛍光標識したHDLを細胞に添加し、その蛍光強度を測定することで細胞内に取り込まれたHDL量を評価することを試みた。蛍光強度を測定する方法を検討した結果、HDLを取り込んだ細胞を界面活性剤で溶解した後に、その溶解液中の蛍光強度を測定することが、再現性もよくスループット性も高いことがわかった。 ApoA1と結合するタンパク質Xを前年度同定していたが、このタンパク質Xをノックダウン法を用いて細胞内の存在量を減少させると、HDLの取り込み能に変化が認められた。 HDL側にアプローチしたコレステロールエステル転送タンパク阻害薬やニコチン酸製剤などのHDL-C値の上昇薬を用いた大規模臨床試験では、これまでのところ心血管疾患の予防効果は証明されていない。したがって、HDL側だけの研究では不十分であり、HDLと細胞との相互作用の分子機序を明らかにすることが必要である。本年度は、この分子機序を明らかにする重要な知見を得ることができたと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
蛍光強度の測定法や各種培養条件などを決定するために時間を要したが、細胞内へのHDLの取り込み量を定量評価できる実験系を構築できた。ノックダウン法を用いてHDLの細胞内への取り込み能を評価することで、HDLの取り込みに関与している分子を同定することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
構成成分を変化させたHDLを作製して、これらの細胞内への取り込み量を測定することで、どのようなHDLが細胞に取り込まれやすいか、取り込まれにくいかを調べる予定である。
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