2019 Fiscal Year Research-status Report
Mechanism for cardiomyocyte-specific nuclear architecture and disease development by dynamic DNA demethylation system.
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18K08085
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
小田 真由美 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任講師 (80567511)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | エピゲノム / DNAメチル化 / 心筋細胞 / 細胞成熟 / 病態発生機構 / 転写伸長反応 / スプライシング / gene body領域 |
Outline of Annual Research Achievements |
心臓は心筋細胞で構成される。心筋細胞は心臓の収縮機能を担い、心筋細胞特異的遺伝子の変異は先天的心筋症の原因となる。心筋細胞の病理を調べる目的にお いて幹細胞から分化させた幹細胞由来心筋細胞は有用であるか、生体内の心筋細胞に比べて未成熟であり、長期培養しても成熟心筋細胞の特徴を獲得しないことが知られている。 このことは、主に成体の心筋細胞を対象とする病態モデル作成などにおける障壁となっている。 2018年度はマウスES細胞由来心筋細胞(mESC-CM)を無血清培地で長期培養した mESC-CMサンプルを用いて5hmC修飾領域を調べた結果、培養10日目に心筋細胞特異的遺伝子 のTSS下流直下に5hmCの蓄積がおこることがわかった。この一過性の蓄積は新生仔心筋細胞の範囲と異なっていたため、2019年度は、生体内と幹細胞由来心筋細胞でのDNAメチル化代謝の違いと成熟状態の違いを検証を進めた。心筋細胞特異的遺伝子のgene body領域(GB領域)で極めて高い転写伸長反応とDNA低メチル化の関連性を確かめるため、まず新生仔と成体の心筋細胞を高深度のRNA-seq解析を行いた転写産物のスプライシング調節について比較した。その結果、新生仔に比較して成体心筋細胞で高頻度のエクソン・スキップが起こっていることがわかった。この結果は高度な転写伸長反応は余剰の転写産物を生産することで多くの転写リソースを心筋細胞特異的遺伝子に集める可能性がある。今後、この作用の生物学的意義と幹細胞由来心筋細胞における未成熟との関係性について更に解析をすすめる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2019年度は、生体内と幹細胞由来心筋細胞でのDNAメチル化代謝の違いと成熟状態の違いを検証を進めた。マウス新生仔と成体の心筋細胞を高深度のRNA-seq解析を行いた転写産物のスプライシング調節について比較し、新生仔に比較して成体心筋細胞で高頻度のエクソン・スキップが起こっていることがわかった。この結果はgene body領域(GB領域)の高度な転写伸長反応が起こっていることが、結果としてはあまり正確なスプライシングが行われず転写産物としては品質の低いものが多量にできている可能性がある。一方で、転写産物の品質を下げて最終産物に比較して大量の転写を行っていることは、GB領域に転写マシナリーのリソースを係留することで成熟細胞における細胞種特異的遺伝子の発現維持に寄与している状態があるという可能性を示している。これは一見矛盾的ではあるが、このような余剰が成体の心筋細胞にあるとすれば細胞の予備能力が見かけより高いことを示す。つまり、この転写状況を改善することで転写効率の向上を介し、心筋細胞機能の改善による心疾患の治療法などの発見へつなげることができると期待する。 実験方法には細心の注意を行っているが、今後この結果が採材時の刺激による細胞変化などではないことを確認し、慎重に結論を導く必要がある。2020年度は、この結果の確認実験を行い、論文作成を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度の研究結果により、成体心筋細胞におけるgene body領域(GB領域)の高度な転写伸長反応の結果、多くの余剰な転写産物の産生が予想された。この結果に対し、この過剰な転写伸長反応は成熟心筋細胞において細胞種特異的遺伝子が十分かつ持続的な転写を行うための必要条件であるという仮説をたて、このことが(1)成体心筋細胞における予備能力の多寡に関連する、かつ(2)幹細胞由来心筋細胞に置いてこの状況が作られないことが成熟不全の原因となっているという2つの可能性について検証を進める。 (1)については、マウスでの結果をヒトにおける心疾患状態と結びつけ、死後組織のDNAメチル化解析(5mC, 5hmC)を行うことにより、健康および病態の心臓組織をDNAメチル化ターンオーバーの店で比較を行う。現在協力研究者の協力の下、この解析を行うための倫理審査の準備を進めている。(2)については、マウス幹細胞由来心筋細胞とヒト幹細胞由来心筋細胞のDNAメチル化解析を進めている。こちらも協力研究者のサンプル作成を依頼済みであり、作成されたサンプルを用いたDNAメチル化解析を早急に進める。
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Causes of Carryover |
2019年度はマウス心臓組織および幹細胞由来心筋細胞の転写産物データおよびのDNAメチル化解析データの再解析、次の方法論など公共データの再解析など、コンピュータを用いた再解析に多くを充てたため、一部の研究費の使用を控えた。逆に、2020年はこれらの調査をもとに、大規模なエピゲノム解析を行い、仮説を検証する段階に入るため、次年度使用額を設定している。次年度使用額は主に、転写産物およびエピゲノム解析のための次世代シーケンサーデータ取得費用に使用される。
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] Generation and profiling of 2,135 human ESC lines for the systematic analyses of cell states perturbed by inducing single transcription factors2020
Author(s)
Nakatake Y, Ko SSH,Sharov AA, Wakabayashi S, Murakami M, Sakota M, Chikazawa N, Ookura C, Sato S, Ito N, Ishikawa-Hirayama M, Mak SS, Jakt KN, Ueno T, Hiratsuka K, Matsushita M, Goparaju SK, Akiyama T, Ishiguro K, Oda M, Gouda N, Umezawa A, Akutsu H, Nishimura K, Matoba R, Ohara O, and Ko. MSH
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Journal Title
Cell Reports
Volume: -
Pages: -
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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