2019 Fiscal Year Research-status Report
「血管褐色化」からとらえる閉経後の動脈硬化性疾患への新たなアプローチ
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18K08096
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
上田 和孝 東京大学, 医学部附属病院, 特任助教 (60375798)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 動脈硬化 / エストロゲン / 脂肪褐色化 |
Outline of Annual Research Achievements |
女性における虚血性心疾患や脳卒中等の動脈硬化性疾患の発症率は、閉経後に急速に上昇することから、主要な女性ホルモンであるエストロゲンが動脈硬化の発症・進展に深く関わっていることが推察される。申請者らは予備検討において、内皮傷害を受けた血管では、一般に「褐色脂肪」細胞に特異的に発現するとされる遺伝子群が顕著に増加することを捉えた。これは「血管の褐色化」ともいえる過去に報告のない現象であり、さらに興味深いことにこの現象はエストロゲンによって制御されていた。また申請者らは、様々なエストロゲンシグナル経路のうち、”non-genomic”経路のみを選択的にブロックしたマウスを世界に先駆けて樹立した。そこで本研究では、このマウスをはじめ複数の遺伝子改変マウスを用いて、「血管褐色化」という現象の意義と、エストロゲンシグナルとの関係について、多角的に検討を行うこととした。
まず、血管内皮傷害を受けた血管において褐色化する血管組織成分を明らかにするために、組織免疫染色法を用いて、代表的な褐色化マーカーであるUCP1がいずれの血管構成成分に発現しているのかを検討した。その結果、血管周囲脂肪組織(perivascular adipose tissue; PVAT)において、UCP1の特異的な発現上昇が起きていることを見出した。次に、RNAシークエンスによるネットワーク解析を行い、血管褐色化のマスター遺伝子として、PCG1aを見出した。さらにその遺伝子をin vivo siRNA技術を用いてノックダウンしたマウスを作製し、そのマウスに血管傷害を加えると病的血管リモデリングが増悪したことから、血管褐色化は血管保護的に作用していることが示唆された。
今年度は血管褐色化が血管リモデリングを抑制する機序について、エストロゲンシグナルの特異的ブロックマウスなどを用いて解明を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、血管内皮傷害を受けた血管において褐色化する血管組織成分を明らかにした。そして、RNAシークエンスによるネットワーク解析を行い、血管褐色化のマスター遺伝子を見出した。以上から、血管傷害ストレスに対する血管褐色化の意義を見出すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は血管褐色化が血管リモデリングを抑制する機序について、エストロゲンシグナルの特異的ブロックマウスなどを用いて解明を進めるとともに、血管褐色化制御薬の同myカウ硬化への有効性についても検討を進める方針である。
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Causes of Carryover |
COVID19の流行に伴い、本年度に行う予定であった実験の一部が行えなったため。
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Research Products
(8 results)