2020 Fiscal Year Research-status Report
心血管病における新規E3リガーゼARIH2によるインフラマソーム制御機構の解明
Project/Area Number |
18K08112
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
高橋 将文 自治医科大学, 医学部, 教授 (40296108)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 博昭 自治医科大学, 医学部, 講師 (70593622) [Withdrawn]
唐澤 直義 自治医科大学, 医学部, 講師 (60631893)
渡邊 幸子 自治医科大学, 医学部, 助教 (80770619) [Withdrawn]
鎌田 諒 自治医科大学, 医学部, 客員研究員 (60801420)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | サイトカイン / 炎症反応 / 心血管病 / タンパク質修飾 |
Outline of Annual Research Achievements |
インフラマソームは強力な炎症性サイトカインであるIL-1β産生を制御する自然炎症経路の一つであり、心血管疾患の病態に共通する無菌性炎症の惹起に寄与する細胞内分子複合体である。申請者はこれまで、心血管疾患におけるインフラマソームの重要性を報告し、その制御機構の解明が新たな治療法の開発に繋がることを明らかにしてきた。申請者らが同定したE3リガーゼであるARIH2の役割を明らかにするため、マクロファージ特異的ARIH2欠損マウス(全身欠損は胎生致死)とドキシサイクリン誘導性ARIH2発現マクロファージを作製して解析した。ARIH2欠損マクロファージでは、野生型と比較してNLRP3の発現が増加しており、NLRP3活性化刺激によるIL-1β産生も亢進していた。また、ドキシサイクリンによってARIH2を発現させるとNLRP3発現は低下し、これはプロテアソーム阻害によって抑制されたが、オートファジー阻害によっては影響を受けなかったことから、ARIH2によるNLRP3分解はプロテアソームを介していることが示唆された。 一方、TR-TUBE法を用いて、ARIH2によりユビキチン化される新規標的分子(基質)の探索を行い、PRMT5とMEP50を新規基質としてそれぞれ同定した。PRMT5とMEP50は分子複合体メチロソーム(Methylosome)を構成し、タンパク質のアルギニン残基のメチル化を介して遺伝子発現やRNAプロセシング、シグナル伝達、細胞分化・増殖など、様々な生命現象を制御しているが、心血管疾患での役割や制御機構はほとんどわかっておらず、今後の研究の進展が期待される。一方、インフラマソームの病態での解析として、腸管虚血再灌流傷害後の急性肺傷害でのNLRP3インフラマソームの役割やASCによる血小板の活性化、グルコースによる低酸素誘導性NLRP3インフラマソームの活性化の制御について解析し、論文として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ARIH2によるNLRP3インフラマソーム活性化の亢進が示され、ARIH2によるNLRP3の分解機序についても明らかにすることができた。また、ARIH2の新規標的分子としてメチロソーム構成分子であるPRMT5とMEP50を同定できたことから、現在の進捗状況はおおむね順調と判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
ARIH2によるインフラマソーム制御による病態で役割を明らかにするため、マクロファージ特異的ARIH2欠損マウスとドキシサイクリン誘導性ARIH2欠損マウスを用いて、心血管疾患モデル(血管傷害・腹部大動脈瘤・動脈硬化・心筋梗塞・心肥大・ドキソルビシン心傷害等)を作製して表現型を検討し、有意な差を認めたモデルで分子機序を解析する。さらに責任細胞の解析として、誘導型ARIH2欠損マウスの骨髄細胞による骨髄置換や、マクロファージおよび好中球除去(Clodronate liposomeおよび抗Gr-1中和抗体による)実験、他の細胞特異的ARIH2欠損マウスを作製して検討する。一方、ARIH2のメチロソームへの関与が示唆されたことから、ARIH2とPRMT5およびMEP50の相互作用を免疫沈降法やプルダウンアッセイで確認し、ARIH2のRING1(H158A)・RING2(C300A)ドメインの変異体、PRMT5・MEP50の一部欠損変異体を用いて、それぞれの分子の結合領域の同定を行う。ARIH2の過剰発現・欠損およびARIH2遺伝子改変マウス由来の細胞でのPRMT5とMEP50のUb化を検討し、責任リジン(K48/K63など)を特定する。Ub化によるタンパク分解(主にK48を介する)あるいはシグナル伝達(主にK63を介する)を検討し、分解であればその機序(プロテアソームあるいはオートファジー)についても解析を行う。さらに、メチロソームによるメチル化の下流イベントの解析やインフラマソームとの関連についても検討を行い、ARIH2の役割の解明を目指す。
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Causes of Carryover |
(理由)本研究を遂行中に遺伝子欠損マウスの供給が追い付かず、一時的に研究が中断していた。そのためその期間中に使用予定であった試薬、抗体等の購入費として次年度に繰り越す。 (使用目的)モデル作成に必要な試薬、FACS解析で使用する抗体および炎症性サイトカイン測定キット(ELISA、CBA)を購入する予定である。
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Research Products
(10 results)