2018 Fiscal Year Research-status Report
心房周囲脂肪における心房細動の進展の解明:肥満犬心房細動モデルを用いた検討
Project/Area Number |
18K08117
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
奥村 恭男 日本大学, 医学部, 教授 (20624159)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 心房細動 / メタボリック症候群 / 心外脂肪 |
Outline of Annual Research Achievements |
糖尿病や高血圧を含むメタボリック症候群は、全身の炎症の惹起することにより、心房細動の進行に寄与するだけでなく、心房細動の合併症である脳塞栓症のリスクを上昇させる。また、メタボリック症候群やその表現型である心房周囲脂肪が心房筋の電気的、構造的リモデリングを引き起こすことが知られているが、その正確なメカニズムは明らかでない。本研究では、申請者が開発したメタボリック症候群イヌ高頻度心房刺激モデルを用いて、メタボリック症候群によって促進された心房筋の構造的リモデリングの機序を明らかにするともに、その表現型である心房周囲脂肪の心房細動進展における機序を解明する。 動物実験:ビーグル犬15頭を対象に高カロリー食を給与し、10~12週間の長時間高頻度心房刺激を行う肥満合併長時間高頻度心房刺激群 (MetS-L-AF群:5頭)、通常食に長時間高頻度刺激を行う群 (L-AF群:5頭)、高脂肪食のみを与える肥満群(MetS群:5頭)に分ける。電気生理学的検査を行い、心内電位や心房細動の誘発性を評価し、組織学的、分子生物学的解析を行う。先行研究の通常食を与えた対照群、高カロリー食を給与し、4~8週間の短期間高頻度刺激を行ったMetS-S-AF群(5頭)、通常食に短期間高頻度刺激を行ったS-AF群(5頭)とも総合的に比較検討する。 臨床研究:カテーテルアブレーション前のMRI画像のADASソフトによる線維化の評価は限界があり、正確には判定が困難であった。現在、MRI画像での線維化定量法を模索している。我々は、心エコー上、右室前面に描出される心外脂肪の厚さがアブレーション後に減少することを報告している。今回の臨床研究では、3次元CT画像上に描出される左房周囲の心外脂肪のアブレーション後の経時的変化についての観察を行っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在、MetS群1頭終了し、現在4頭に高カロリー食を給与しMetSモデルを作成中である。MetS群の4頭は6~7月に電気生理学的検査を行い、その後に組織学的検討を行う予定である。また、1頭はペースメーカ移植を行い通常食を給与し、L-AFモデルを現在作成中である。2019年にL-AF群をさらに2頭、MetS -L-AF群2頭を作成し、2020年に残りのL-AF群2頭、MetS-L-AF群3頭を行い実験終了する予定である。現在、先行研究の組織学的検証は終了した。今後、先行研究と同様に、炎症、線維化関連マーカーの遺伝子解析およびWestern blottingによるタンパク発現に関して行う予定である。心外脂肪からの心房筋への脂肪浸潤が、対照群、S-AF群、MetS-S-AF群と段階的に認められた。線維化も同様の傾向を呈していたが、統計的な有意差を認めなかった。しかしながら、線維化関連マーカーであるⅠ,Ⅲ型コラーゲン、フィブロネクチン1のmRNAは、段階的に対照群、S-AF群、MetS-S-AF群と増加しており、潜在的な線維化は有意にMetS-S-AF群で高かった。また、組織学的な心外脂肪からの心房筋への脂肪浸潤の程度が、心房筋の障害を反映する左房不応期の短縮と有意に関連していた。以上から心外脂肪からの脂肪浸潤が心房筋障害を促進している可能性が示唆された。 臨床研究では、3次元CT画像上に描出される左房周囲の心外脂肪のアブレーション後6ヵ月の解析を10例終了した。心エコーと同様に縮小を認めており、今後も経時的変化についてデータを集積していく。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の実験計画では、従来の心房―心室同期ペーシングを応用した方法で心房連続刺激を行うことでAFモデルを作成する予定であった。この方法では心房連続刺激頻度が320/分であったため、線維化が十分作成できなかった。そこで、新規に400/分の高頻度連続刺激を可能である高頻度連続刺激用のペースメーカを購入した。このペースメーカは脳神経刺激用のものであるため、心房リードと接続するコネクションを作製する必要があった。その作成に時間を要したため、やや遅延した。しかしながら、本ペースメーカにより良好な高頻度刺激が得られることから、当初の刺激期間を16週間から10~12週間に短縮することとした。刺激期間の短縮により、実験計画全体を短縮することが可能となると考えている。先行研究とほぼ同様の方法で、電気生理学的検査と並行して、組織学的、分子生物学的検証を行うため、今後の研究をスムーズに行うことが可能になると考えている。 臨床研究は症例数の集積は連続的に増加しているが、3次元画像作成や解析に時間を要する。画像解析専属のドクターを一人当てることで、さらに研究を推進したいと考えている。
|
Causes of Carryover |
本年度は、特殊ペースメーカ購入と心房リードとのコネクターの作成に時間を要した。このため、当初予定していた実験計画よりやや遅延した。当初予定した犬の購入や飼料にあてる費用を、分子生物学的検証に必要な機器を購入した。 次年度は、Real time PCRやwestern blotで必要とされる抗体や犬の購入や飼料にあてる予定である。
|
-
[Journal Article] Effect of epicardial fat and metabolic syndrome on reverse atrial remodeling after ablation for atrial fibrillation.2018
Author(s)
Monno K, Okumura Y, Saito Y, Aizawa Y, Nagashima K, Arai M, Watanabe R, Wakamatsu Y, Otsuka N, Yoda S, Hiro T, Watanabe I, Hirayama A.
-
Journal Title
J Arrhythm
Volume: 34
Pages: 607-616
DOI
-
-
-
-
[Presentation] Influence of Obesity on the Progression of Electrical and Structural Remodeling in a Canine Atrial Fibrillation Model2018
Author(s)
Masaru Arai, Yasuo Okumura, Ichiro Watanabe, Koichi Nagashima, Kazuki Iso, Ryuta Watanabe, Yuji Wakamatsu, Sayaka Kurokawa, Kimie Ookubo, Toshiko Nakai, Hiroyuki Hao, Rie Takahshi, Yoshiki Taniguchi, Mizuki Nikaidou, Atsushi Hirayama
Organizer
第65回日本不整脈心電学会学術集会
-