2019 Fiscal Year Research-status Report
心筋細胞核内情報伝達機構を標的とした新規心不全療法開発のための創薬展開医療研究
Project/Area Number |
18K08121
|
Research Institution | Department of Clinical Research, National Hospital Organization Kyoto Medical Center |
Principal Investigator |
長谷川 浩二 独立行政法人国立病院機構(京都医療センター臨床研究センター), 展開医療研究部, 研究部長 (50283594)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 循環器・高血圧 / シグナル伝達 / 薬学 / トランスレーショナルリサーチ |
Outline of Annual Research Achievements |
21世紀の高齢化社会の到来とともに、これからますます増加する高血圧性心疾患および虚血性心疾患による心不全に対し、その発症を抑制すると同時に、心不全に対する新たな治療法を確立することは、社会的・医療経済的急務である。申請者はこの20年間、心不全の根本的治療法開発のため心筋細胞肥大における核内情報伝達機構の解明を精力的に行ってきた。そして、ヒストンアセチル化酵素(HAT)活性を持つ転写調節因子p300がGATA4因子をアセチル化し(Mol Cell Biol 2003)、心筋梗塞後のリモデリング増悪させることを明らかにした(Circulation 2006)。さらに、天然物ウコンの主成分でp300のHAT活性を特異的に抑制するクルクミンが、心筋GATA4のアセチル化を抑制することにより心不全の増悪を抑制することを、高血圧心疾患及び梗塞後心不全の2つの動物モデルで確認した(J Clin Invest 2008)。こうして心筋細胞核の過剰なアセチル化が病的心筋細胞肥大から心不全発症に重要であることが国際的に認識されてきた(Circ J 2010)。心筋核内においてp300/GATA4は巨大なコンプレックスを形成していると推測されるが、このコンプレックスは心不全シグナルによって、時間的、空間的に変化し、さまざまなクロマチン修飾因子がリクルートされることにより転写の活性・不活化を制御していると考えられる。より強力な心不全治 療薬の開発のため クルクミン の詳細な構造活性相関を行う必要がある。そこで、静岡県立大学 森本達也教授と協力し、本申請研究においては、クルクミンをリード化合物とした創薬を目指し、クルクミン誘導体・類縁化合物の心不全治療薬としての効果を検証することを目的とした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は、天然クルクミンより強い抗癌作用を有する合成クルクミン誘導体 GO-Y030 を用いて p300HAT 活性阻害作用及び心筋細胞肥大抑制作用の比較検討を行った。 すなわち、in vitro HAT アッセイ法により、クルクミン及びGO-Y030の HAT 活性阻害作用を評価 した。次に、初代培養心筋細胞にGO-Y030処理を加え、心筋細胞肥大を誘導 するためにフェニレフリン刺激を行った。その後、ヒストン H3K9 のアセチル 化をウエスタンブロットにて、肥大反応遺伝子である心房性利尿ホルモン及びB-type利尿ペプチド の mRNA 量を RT-PCR にて、抗 β-ミオシン重鎖 抗体による免疫染色及び心筋細胞面積測定にて心筋細胞肥大を評価した。In vitro HAT アッセイ法の結果、合成クルクミン誘導体 GO-Y030は同濃度の天然クルクミンより強いp300 HAT 活性阻害作用を示した。またGO-Y030は、 PE 刺激により増加 したヒストン H3K9 のアセチル化や、ANF と BNP の mRNA 発現量及び心筋細胞 肥大を、天然クルクミンより低濃度で抑制していた。平成31年度(令和元年度)はこれらの所見をまとめて論文化して提出した。
|
Strategy for Future Research Activity |
以上より、GO-Y030は 天然クルクミン より強いp300HAT 活性阻害作用及 び心筋細胞肥大抑制作用を有することが明らかとなった。今後、さらに構造活性相関や成体での検討を行うことで、より良い心不全治療薬の開発 に繋がることが期待される。またヒストンアセチル化ドメインの解析により、心不全発症の分子機構について、さらなる解明が期待される
|
Causes of Carryover |
(理由)予定していた支出と実際の支出に差額が生じ、少額が残ったため次年度に使用するものとする (使用計画)次年度は、心不全発症伝達経路の解明として、MEP50,PRMT5,TBL1などの分子について解析予定であり、またPRMT5の心臓特異的欠損マウスの飼育や、大動脈縮窄ストレスによる心機能解析などを行ってゆく予定である。またクルクミンより高い抗がん作用を持つクルクミン類似体につき、p300-HAT活性阻害、心筋細胞肥大や心不全の進展に対する効果を検討していく予定である。これらの研究計画に必要な経費として使用する予定である。
|
Research Products
(4 results)