2019 Fiscal Year Research-status Report
家族性高コレステロール血症の残余リスク制圧:HDLを悪玉化させる原因脂質の探索
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18K08125
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
小倉 正恒 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (30532486)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | HDL機能 / コレステロール搬出能 / 家族性高コレステロール血症 / リン脂質 / ASCVD |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度、遺伝学的に証明された家族性高コレステロール血症患者29名のHDL分画をリピドミクス解析し、動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)患者でHDL分画中濃度が低く、コレステロール搬出能と正に関連する傾向を示したホスファチジルコリンおよびホスファチジルエタノラミンのうち、脂肪酸側鎖にステアリン酸とアラキドン酸を含むものがASCVD患者でHDL分画中濃度が高く、コレステロール搬出能と負に関連する悪玉脂質と考えられたため、アラキドン酸および脂肪酸結合タンパクを細胞に作用させ、コレステロール引き抜き反応を検討したところ、脂肪酸または脂肪酸結合タンパクのみでは引き抜き反応は低下しないが、両方を作用させることにより引き抜き反応が低下したため、アラキドン酸またはその代謝物が脂肪酸結合タンパクにより細胞内に作用しいることが想定された。 また家族性高コレステロール血症患者のHDL分画における総リン脂質に占めるリゾホスファチジルコリンの割合がASCVD患者で高く、コレステロール搬出能と負の関連を示す指標として有用であることを見出し、この比がHDL-C値と負に関連することから比を決めるメカニズムはレシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ活性ではなくホスフォリパーゼA2活性であることが想定された。 さらにHDLの粒子サイズと引き抜き能・ASCVD・頚動脈硬化との関連を検討したところ、粒子サイズの大きなHDL中のコレステロール濃度が抗動脈硬化作用と関連が深く、またアポリポタンパクEを含むHDLに含まれるコレステロール濃度が特に上記の関連が高い善玉マーカーと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
家族性高コレステロール血症患者の血漿からHDL分画を得て、HDLを悪玉化させる候補資質およびそのメカニズムの一端に迫りつつあるため、おおむね計画通り進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
アラキドン酸自体もしくはその代謝物が脂肪酸結合タンパクにより運搬され、コレステロール搬出反応を低下させることを想定しているため、アラキドン酸カスケードを構成する各酵素や脂肪酸結合タンパクの阻害薬もしくはノックダウン実験などを実施予定である。またリゾホスファチジルコリンそのものやホスフォリパーゼA2を作用させる実験により、HDL機能が障害されるメカニズムを明らかにしていきたいと考えている。またHDL粒子サイズの大きさがHDL機能と関連する可能性を見出しており、HDL粒子サイズに関与しHDL機能に影響する因子の特定も目指したい。
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Causes of Carryover |
国際学会および国内学会の旅費、消耗品費について、他の研究費で賄ったため。
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Research Products
(11 results)