2019 Fiscal Year Research-status Report
サルコイドーシスにおける制御性T細胞の機能と治癒機構からみた治療法の解明
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18K08147
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
安東 優 大分大学, 医学部, 客員研究員 (20336267)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | サルコイドーシス / 制御性T細胞 / 免疫寛容 |
Outline of Annual Research Achievements |
サ症における肉芽腫形成過程の解析は多くなされているが、改善過程に焦点をあてた研究はほとんどない。Tregの機能が活動期では低下し回復期には改善するとの研究報告があることから、予想される結果は、改善過程時ではTregの復元によるIL-10産生能の増加が予測され、その復元にはTGF-βやIL-35によるTregの活性化が関与するのではないかと推測する。また、最近の研究では、サ症の肉芽腫形成に活性化したTh17リンパ球が集簇し、Th17と抑制的に働くTregとのバランスで肉芽腫の形成がコントロールされる。Th17 上に発現するCCR6は、CCL-20に特異的に結合することが知られており、CCL-20は類上皮細胞肉芽腫やマクロファージに発現している。したがって、肉芽腫やマクロファージから産生されるCCL-20 を介してTh17が集簇する機序が推定され、疾患活動性マーカーとなる可能性があるが、その詳細についての報告はない。 本研究の目的は、新たな治療ターゲットとなるTregおよびIL-10発現細胞と疾患活動性、予後との関連を調べ、IL-10発現を制御するであろうTGF-β、IL-35との関連を明らかにすることである。また、Tregと相補的に働くTh17の肉芽腫形成機序も明らかしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
制御性T細胞と相補的に働き、肉芽腫形成に強く関与するものと考えられるTh17細胞に注目し、血清、気管支肺胞洗浄液(BALF)を用いてIL-17を測定した。しかし、いずれも測定感度以下であり、データーが得られなかった。Th17は、CCR6を有しており、CCL-20と反応し病巣局所への集簇が観察される。サ症においても、CCL-20の発現がみられるものと想定されたので、血清とBALF中のCCL-20濃度をELISA法で測定した。その結果以下のことが明らかになった。1)サ症における血清CCL-20値は、健常ボランティアよりも高値であった。2)血清CCL-20とsIL-2Rとの間には正の相関がみられた。3)BALF CCL-20はsIL-2R、BALF総細胞数およびCD4/8比と正の相関がみられた。4)血清CCL-20値のcut-offを11.35pg/mlに設定し、高値群と低値群に分けると、高値群においてACE, リゾチーム, sIL-2R, BALF中リンパ球分画が高値、DLcoが低値であった。以上より、CCL-20は、新たなサ症における疾患活動性マーカーの候補となる可能性があるため、今後症例数を増やし、臨床パラメーターと比較、検討する予定である。 これまでIL-10. IL-17の測定がうまくできなかった。血清やBALF中濃度が低いことが原因と思われた。他の研究で、凍結乾燥を行いサンプル濃縮の技法を習得しているので、サンプルを濃縮して再度実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
1. PBMC中IL-10, TNF-α, IFN-γmRNA発現量とTregの発現頻度の検討: 活動期10例、非活動期10例、健常ボランティア10例からPBMCを採取する。24時間培養後1mlをRealtime PCR用に採取し、残りを濃縮しフォローサイトメトリーを実施しTreg、Il-10産生細胞の発現を測定する。同時に、RNA EasyKitでRNAを抽出し、Reverse Transcription を行いRNA 200ng/mlに調整しcDNAライブラリーを作成する。各種サイトカインのプライマーを用いReal time PCRでmRNA発現量を定量する。 2. Treg分離培養、IL-10、IL-35、TGF-β産生の検討: 活動期、非活動期、健常コントロールそれぞれ10例から末梢血を採取し、cDNAライブラリーを作成する。IL-10、IL-35、TGF-βの発現をReal time PCRで定量する。 3. PBMC産生サイトカイン及びTreg発現の経時的変化: 診断時と3~6ヵ月後の2pointで採血し、Treg、IL-10産生発現頻度、IL-10、IFN-γ、TNF-αmRNA量が予後予測因子になるか検討する。 4. 肺肉芽腫マウスモデルにおけるTreg機能の解析: Tregを標識したFoxP3GFPマウスを用い肺肉芽腫モデルを作成し、Day0, day3, day7, day14, day28に血液、BALF中のTreg(GFP陽性細胞)の発現頻度をフローサイトメトリーで測定する。活動期にはTregが不活性化され、改善期には回復している可能性があるため、マウスモデルで活動期day 3, 改善期day 28にBAFLを採取しTregを抽出し、CTLA-4及びCD25遺伝子発現をリアルタイムPCRで定量し比較する。
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Causes of Carryover |
本年度予定予算を全額使用できなかった理由としては、FACSで使用する予定のモノクローナル抗体(抗CD4, 抗CD25, 抗FOXP-3, 抗IL-10)を購入しなかったこと、リアルタイムPCRの実験を遂行しなかったことにより、試薬購入費が高額にならなかった。現在フローサイトメトリーの条件を調整し、最適環境が整えば実験を遂行する予定である。
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