2019 Fiscal Year Research-status Report
肺マイクロバイオーム解析に基づくIPF急性増悪の病態解明と革新的治療法への展開
Project/Area Number |
18K08150
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
千葉 弘文 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (40347175)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋藤 充史 札幌医科大学, 医学部, 助教 (00768939)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | マイクロバイオーム / 特発性肺線維症 / 肺サーファクタント蛋白質 / 急性増悪 |
Outline of Annual Research Achievements |
特発性肺線維症(IPF)の死亡原因として重要な病態である急性増悪に至る仮説として、IPF患者のマイクロバイオームに、多様性の喪失と特定細菌群の増殖(dysbiosis)が起こり、肺局所の自然免疫機構の破綻と過剰な炎症反応から、最終的に急性増悪に至ると発想し、本研究を遂行中である。申請者らは、まずIPF患者の肺マイクロバイオーム解析から研究を開始し、①急性増悪死を含む早期死亡が肺マイクロバイオームの多様性の喪失と相関すること、②肺内の特定細菌群の増殖と肺活量の低下が相関することを明らかにし、英文誌で報告した。Takahashi Y, Chiba H, et al.Impaired diversity of the lung microbiome predicts progression of idiopathic pulmonary fibrosis. Respir Res.2018 27;19:34.この結果は、IPF患者の急性増悪発症、および線維化の進行にマイクロバイオームが関与していることを示し、さらに肺内マイクロバイオームを変容させることが治療につながることを示唆している。我々は現在、肺内マイクロバイオームの形成、変容に重要な役割を担うと考えられる肺サーファクタント蛋白質A(SP-A)と肺内マイクロバイオームの関連について、検討を進めている。SP-Aは、肺内の自然免疫を担う蛋白質であり、SP-Aノックアウトマウスでは肺の線維化が進行することが知られている。我々は、SP-Aノックアウトマウスのマイクロバイオーム解析、およびブレオマイシンによる線維化を誘導した時のマイクロバイオーム解析を実験中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
すでに、重要研究課題の1つであるIPF患者の肺内マイクロバーオーム解析により、多様性の喪失が予後や疾患進行と関連することを英文誌(査読あり)に報告した。課題の1つである、マイクロバイオーム解析を介した治療法開発についても、マイクロバイオームの変容に関する分子として肺サーファクタント蛋白質に焦点をあて、申請者らの保持しているノックアウトマウスを用いた研究に発展している。サーファクタント蛋白質の欠如により、肺内マイクロバイオームに変容が起きることがわかりつつある。 SP-A有無によって、8週齢時には菌相全体に差はないが、25週齢時には大きな差があることが分かった。さらに気管支肺胞洗浄液中の菌の多様性について検討すると25週齢のSP-A KOマウスでWTに比較して多様性が有意に低下することが明らかとなった。これらの結果は、SP-Aが加齢における肺マイクロバイオームに対して何らかの影響を及ぼしていることを示している。一方で、tuf geneを用いて肺内総菌量を推定して比較するとWTとKO間ではどの週齢においても差は認めなかった。次に個々の菌について検討すると、門レベルではややFirmicutesがProteobacteriaに対し優位な傾向を認め、特にFirmicutesの中でStaphyalococcaceae科が25週齢のKOで有意に増加していることがわかった。 急性増悪発症リスクのバイオマーカとしてのマイクロバイオームの応用については、急性増悪発症患者が少ないことから、やや検討が遅れている。総合しておおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
肺サーファクタント蛋白質の発現と肺内マイクロ―バイオームとの関連は、新たな治療法開発に重要と考えられる。現在、SP-Aに加えSP-Dに関してもKOマウスを用いて検討中である。さらに、ヒトにおけるBAL液中の肺サーファクタント蛋白質量と肺内マイクロバイオームとの関連を検討していく。
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Causes of Carryover |
当初予定していたマイクロバイオーム解析に使用する試薬購入費が少なくすんだため。本研究のノックアウトマウスの解析のための試薬購入費として用いる。
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