2018 Fiscal Year Research-status Report
創薬にむけたIPF急性増悪の病態研究:ステロイド不応性シグナル伝達経路に着目して
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18K08156
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
伊藤 洋子 東海大学, 医学部, 講師 (90286451)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 特発性肺線維症 / 急性増悪 / 肺胞上皮細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
特発性肺線維症(Idiopathic Pulmonary Fibrosis: IPF)は、原因不明で予後不良の難治性肺疾患である。急性増悪はIPFの予後規定因子であるが、確立された治療法がなく、経験的にステロイド大量療法がおこなわれている。また、IPF患者は肺癌の合併も多いが、肺癌治療に使われる放射線照射や抗がん剤投与を契機に急性増悪を起こす可能性が高く、肺癌合併患者では十分な治療が行われていないのが現状である。IPFの病態として、肺胞上皮細胞障害が根本にあると考えられている。そこで、ラットから肺胞上皮細胞および線維芽細胞を分離、培養し、肺胞上皮細胞と線維芽細胞の共培養システムを作成し、IPFの急性増悪の病態を模倣したモデルを作り、1)どのような経路が活性化されるのか?2)またその活性化された経路のうち、ステロイドで抑えられないものは何か?を検討することとした。具体的には細胞内小器官のひとつである小胞体のストレスがIPF患者の肺胞上皮細胞に生じていることが判っており、小胞体ストレスを誘導した肺胞上皮細胞と線維芽細胞を共培養し、そこに、肺癌の治療薬であり肺線維症の急性増悪を起こしうる薬剤であるEGFR-TKIを投与するモデルを作成して検討する。本年度は、新しい研究室に異動してラットの肺胞上皮細胞および線維芽細胞の分離および培養法を確立するために時間を費やした。また、IPF患者が中高年の男性に多いことから、ラットを18カ月から20カ月(人の45歳以上相当)まで飼育し、中高齢ラットから細胞分離を行った。 本年度で、細胞の分離培養システムは確立されたため、今後は、上記目的の1)2)につき具体的に検討していく予定であり、新たな急性増悪の治療につながる経路を明らかにしたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
ラットの肺胞上皮細胞を米国の研究室で日常的に分離、培養していたが、帰国して新しい研究室でゼロから始めてみると、きちんと細胞が分離できるまで、予想以上に時間がかかってしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
計画当初は、すべての実験を中高齢ラットを用いて行う予定であったが、ラットの購入費、飼育費の費用面、およびラットが高齢化するのを待つ時間の面でも難しいことを実感した。そこで、まずは、通常の若年齢ラットを用いて、共培養システムの実験を遂行後、細胞の刺激条件を確定する。その後、中高齢ラットからの細胞も使用して、加齢が与える影響も含め、IPFの急性増悪の病態を模倣した共培養モデルで、1)どのような経路が活性化されるのか?2)またその活性化された経路のうち、ステロイドで抑えられないものは何か?を検討する予定である。
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Causes of Carryover |
先にも述べたが、細胞の分離培養の系を新たな研究室で確立することに時間がかかり、研究の進行が遅れているために、差額が生じた。しかし、幸い現在は実験系が確立されたため、スムーズに共培養システムを用いた実験を開始できており、2019年度にその遅れを取り戻すことが可能であると考えられ、2019年度は2018年度の残り分の実験および2019年度予定の実験を施行する予定である。
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