2019 Fiscal Year Research-status Report
小細胞肺癌に発現する下垂体分化制御因子を指標とした抗がん剤スクリーニング
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18K08162
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Research Institution | Chiba Cancer Center (Research Institute) |
Principal Investigator |
末永 雄介 千葉県がんセンター(研究所), 発がん研究グループ 発がん制御研究部, 研究員 (80581793)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横井 左奈 千葉県がんセンター(研究所), 遺伝子診断部, 部長 (30372452)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 小細胞肺癌 / 下垂体 / 神経分化 / MYCN / OTX2 / PAX6 |
Outline of Annual Research Achievements |
肺癌が神経内分泌細胞様に分化する機構として、神経分化に関与する転写因子ASCL1とNEUROD1が小細胞肺癌において発現上昇し、細胞生存を維持することが報告されている(Osada et al., Cancer Res 2005;Borromeo et al., Cell Reports 2016)。これら転写因子は下垂体発生においてPAX6とLHX3の下流に位置し、より分化した細胞で発現する(Prince et al., Nat Rev Endocrinol. 2011)。本年度、我々は小細胞肺癌16細胞株においてこれら4つの転写因子の発現量を調べ、二つの小細胞肺癌株(SBC3、SBC5)では2次元培養においてASCL1,NEUROD1,POMCが全く発現せず、下垂体初期の転写因子(OTX2、PAX6、LHX3)を高発現することを見出した。しかし、低接着プレートを用いた3次元培養では、これら細胞株でもASCL1,NEUROD1, POMCの発現が誘導され、多くの小胞が形成された。この小胞は胚性幹細胞からin vitroで下垂体を分化させるときに観察されるラトケ嚢様小胞に類似している(Ozone et al., Nature Commun 2016)。ラトケ嚢は個体発生において、口腔外胚葉が下垂体前葉に分化する時に現れる構造であり、小細胞肺癌の細胞塊に現れた小胞も、このラトケ嚢に類似した機能を持つ小胞ではないかと考えた。またOTX2 siRNAによる発現抑制によりMYCNの発現低下が見られることから、小細胞肺癌の分化・脱分化過程ではOTX2によるMYCNの発現制御が重要な役割を持つ可能性が見出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2次元培養における脱分化と3次元培養による神経分化の分子機構の一部が明らかになったため。
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Strategy for Future Research Activity |
小細胞肺癌の3次元培養において、どのようなタイミングで下垂体制御因子が発現し、下垂体発生経路が進行するのかを調べる。形成される小胞での発現とその周囲の細胞での発現を区別するため、主に免疫染色法により転写因子の発現量を調べる。また、3日おきに回収・固定し、小胞の細胞塊での位置(表面か内部か)と転写因子発現量の関係も調べる。実際に調べる転写因子は、下垂体発生初期の転写因子である(OTX2、PAX6、LHX3)や後期に発現する転写因子(NEUROD1、ASCL)と小細胞肺癌の下垂体ホルモン(POMC/ACTH、プロラクチン、成長ホルモン)である。その他、口腔上皮マーカー(PITX1)なども使用し、ホルモン産生細胞が分化するタイミングをとらえる。その他、OTX2によるMYCNの転写制御機構を調べる。MYCNはアンチセンス遺伝子NCYMと正のフィードバック制御を形成しているので(Suenaga et al., 2014 Plos Genetics)、OTX2のMYCN/NCYMフィードバック機構への役割も調べる。
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